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教育ICT

GIGAスクール構想でネットワーク・クラウド・端末を整備

2020年1月5日

「ネットワーク」「クラウド」「端末」を一体的に整備する

これまでとは比較にならないほどの大胆な予算、そして施策が年度末に次々と出た。補助金と裏補助、さらに標準仕様書モデルの提示や調達の仕組みの改革、ガイドラインの改訂、教育の情報化に関する手引まで一体的に提示された。

「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」が2019年12月5日に閣議決定され、2023年度までに全学年の児童生徒1人ひとりがそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境のため、国として継続的に財源支援を講じる。
2019年度補正予算案では1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する「GIGAスクール構想の実現」に2318億円(公立2173億円、私立119億円、国立26億円)(ネットワーク関連1296億円、端末関連1022億円)を計上。

萩生田光一文科相を本部長とする「GIGAスクール実現推進本部」を設置し、「GIGAスクール構想の実現パッケージ~令和の時代のスタンダードな学校へ~」を決定した。「GIGAスクール構想」では、1人1台端末整備及び高速通信インターネット環境整備に向けて、大規模整備を可能にできるような調達の仕組みを改革。環境整備のための標準仕様書を例示する。

■端末補助は上限 1台につき4・5万円

GIGAスクール構想実現に向けた補正予算では、児童生徒用端末1台につき公立・国立は4・5万円を補助。私立学校は2分の1(上限4・5万円)。高等学校はBYODの取組が始まっていることもあり、補助対象外だ。LTE端末の場合、通信費は自治体独自予算となる。リース契約の場合も端末を対象に補助(上限4・5万円)。リース事業者が申請する。

現行の「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022)」に基づく地方財政措置(3クラスに付き1クラス分の端末配備)は引き続き執行し、それ以外の部分が補助対象。

ロードマップでは、2020年度までに小5~中1、2021年度までに中2~中3、2024年度までに小3~小4、2025年度までに小1~小2に1人1台環境を整備することとしている。

■ネットワークは半額補助+裏補助

校内通信ネットワーク整備については小・中・高等学校を対象に1/2を補助。補助上限額は1校につき3000万円、下限額は1設置者につき400万円(調整中)。対象は工事を伴う幹線、支線ケーブル、サーバ、ルーター、ハブ、情報コンセント、ソフト(校内LANとして機能するために最低限必要なもの)等。無線APについてはネットワーク整備と一体的に整備かつ固定設置の場合、補助対象。充電キャビネット等も一体的に整備する場合補助対象。

なお、令和元年度補正予算においては、残り2分の1の自治体負担分について地方債(※)の充当が可能。年度内にこれを起債する場合、自治体負担分の100%に「補正予算債」の充当が可能であり、後年度において、その60%が普通交付税に加算される。これにより、実質的な自治体負担分は、国庫補助対象事業費総額の20%となる。

また、令和元年度補正予算を繰り越し、2020年度に執行する場合、自治体負担分のそれぞれ75%及び15%に「学校教育施設等整備事業債」及び「財源対策費債」の充当が可能。後年度において、それぞれその70%及び50%が普通交付税に加算される。これにより実質的な自治体負担分は、国庫補助対象事業費総額の20%となる。(※地方公共団体が、1会計年度を超えて行う借入れ)

■5G活用も想定

総務省と連携して教育利用できるローカル5Gの活用モデルも構築(補正予算2億4000万円)。活用モデルの実証を行う。ローカル5Gにより、商用基地局がない地域でも自前で超高速環境の利用が可能とする。

経産省との連携によるEdTech実証事業(補正予算10億円)では学校にEdTechサービスの導入を進めようとする企業への補助を行う。

■標準仕様例を例示

大規模調達が容易にできるよう、国が示した標準仕様書のモデル案を基に共同調達を推進する。

端末についてはOSごとに標準仕様書例を作成。3つのOS共通の仕様書には、デジタル教科書等を操作しやすいタッチパネル、テキスト入力やプログラミングに必要とされるハードウェアキーボード、教科書に掲載されている二次元コード読み込みを想定したインカメラ・アウトカメラの装備、重量(1・5㎏未満)などを記した。WiFiを補完するLTE端末も選択肢として例示。

校内LANやクラウド環境等構築業務、充電保管庫の標準仕様書例なども提示。無線APは全教室一斉活用を想定。ケーブルはカテゴリー6A以上、ハブやルーター、スイッチ類は1Gbpsの普及モデルなど。

■調達の仕組みを改革

補助金執行団体(補助事業者)(非営利法人を公募により選定)を設置して都道府県・政令市とリース会社が共同で申請する仕組みを構築。

都道府県・政令市は共同調達の方針作成及び調整やリース会社を選定。

市区町村はランニングコストの見通しを含む整備計画を立案。端末の種類や必要台数に関する必要書類、校内LAN整備に関する必要書類などを用意。それらを都道府県が取りまとめ、内容を精査してリース事業者と共同で補助事業者に申請。

なお購入による調達の場合は市区町村と都道府県・政令市間で調整して調達を行う。

教育委員会担当者は、「端末1000台程度まではスケールメリットがある。政令市ではないが大規模校が多い都道府県でそれ以上の端末整備が必要な場合、独自整備のほうが効率的な場合もある。柔軟性ある仕組みを期待している」と語る。

■ガイドライン改訂 クラウド活用を前提

「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」については、クラウド活用を前提として改訂。従来の第1章を「ガイドライン本文」とし、ガイドラインの目的、制定の背景、基本理念、クラウド・バイ・デフォルトの方針などを記述。従来の2章以降は「参考資料」とし、不正アクセス防止に向けたネットワークの仮想的な分離等に関する文言を整理。クラウドサービス事業者に業務の一部を委託する場合の確認事項などを具体的に追記した。「参考資料」とした理由は「各自治体判断で柔軟な体制構築のため」としている。(関連22面)

■「手引」を改訂

「教育の情報化に関する手引」も改訂、公表した。すべての教職員がすぐに使えることを想定して学校段階ごと、教科ごとに事例を充実。特別支援教育については学習上の困難・障害種別に事例を示した。「プログラミング教育」「デジタル教科書」「遠隔教育」「先端技術」「健康面への配慮」などの新規事項も追加。

「教育の情報化に関する手引」作成検討会座長の堀田龍也教授(東北大学大学院)は「補正予算による端末や校内LANの整備により、学校現場の情報化は急速に進展することになる。導入から活用へ、そして子供たちの情報活用能力の育成につなげるために、『手引』をしっかりと活用してもらいたい」と話した。

■学校ICT活用 フォーラムを実施

文部科学省は1月、学校ICT活用フォーラムを東京(三田共用会議所及び各校)及び京都(京都学・歴彩館及び各校)で開催する。端末・ネットワーク環境等の機器整備、授業イメージの共有や教員研修・教材紹介、ブース展示も行う。分科会方式で同時進行のため、複数興味がある場合は複数人数での参加が必要だ。東京1月16・17日、京都1月15・16日。時間はいずれも10時半~15時半。

同時進行で学校も視察。東京はつくば市立みどりの学園義務教育学校、戸田市立戸田第二小学校、荒川区立第三中学校、渋谷区立西原小学校。京都では箕面市立箕面小学校、草津市立草津小学校ほかの視察を予定。

■教育委員会対象に説明会を実施

これら施策について文部科学省は12月23日、各都道府県・指定都市教育委員会の情報教育環境整備担当課及び首長部局の情報政策推進担当者を対象に説明会を開催。その内容を域内市区町村にも展開することを参加者に求めた。

当日は68都道府県・政令都市から複数名の担当者が参加。終了後の質問時間は長蛇の列となった。主な質問内容については今後、FAQとして公表を予定。

情報教育・外国語教育課の髙谷浩樹課長は「1人1台学習者用端末は令和のスタンダード。ハード・ソフト両面から全国的な環境整備が始まる。依頼に応じ、都道府県主催等の域内市区町村の教育委員会、首長部局への説明会や研修会等に積極的に参加して説明する」と話した。既に年明けの1月6日、福岡県久留米市で説明を行うことが決まっている。

■この機を逃さず 一体となった取組を
(萩生田文部科学大臣 メッセージより抜粋)

今般の補正予算案は、すでに児童生徒3人に1台という地方財政措置で講じたICT環境整備に取り組んできた自治体、またこれから着実に整備に取り組もうとする自治体を対象に、1人1台端末とクラウド活用、それらに必要な高速通信ネットワーク環境の実現を目指すものです。この実現には、各自治体の首長の皆様のリーダーシップが不可欠です。

この機を絶対に逃すことなく、学校・教育委員会のみならず、各自治体の首長、調達・財政・情報担当部局など関係者が一丸となって、子供たち1人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に取り組んで頂きますよう、心よりお願い申し上げます。

教育家庭新聞 新春特別号 2020年1月1日号掲載

<上記記事印刷用(1月号1面)pdfはこちら>
 

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