文部科学省は11月1日、「令和元年度学校魅力化フォーラム」を同省内で開催した。学校再配置や魅力化による活力ある学校づくりをテーマに、千葉大学教育学部の貞広斎子教授が講演。学校統合を実施した小国町教育委員会(山形県)、小規模校を存続して学校間連携を推進する香美町教育委員会(兵庫県)、教育委員会の連携を進める福島県教育庁相双教育事務所および双葉郡内教育委員会の事例が紹介された。
学年単学級が多い香美町では「各々の地区でのきめ細かいふるさと教育を、広域統合で失うことは避けたい」という地域住民の意向もあり、統廃合せずに合同授業を展開。2013年から「香美町学校間スーパー連携チャレンジプラン」を実施している。
小学校9校を2グループに分け、合同による多人数授業「わくわく授業」と、グループに細分した少人数授業「わかった授業」を推進。合同授業は基本的に9時~12時に行う。1回3時間程度、年間10回ほどの合同授業を行っている。
児童を送迎する公用車と運転手は教育委員会事務局が手配する。
この取組により、教員は、異動しても児童との関係がすぐに構築でき、教員研修の機会にもつながった。
児童生徒のコミュニケーション能力も向上。中学校に進学した生徒たちもすぐに打ち解け、新入学時も安定しているなどの成果があった。
福島県教育庁相双教育事務所は8町村教育委員会に対して、教職員配置などの人事管理における支援や各校からの要請に応じた研修支援などを継続して行っている。
双葉郡の児童生徒数は、東日本大震災を機に激減。生徒数が全学年0人になった中学校もあるなどで、教育委員会の連携が必須であった。現在、富岡町を含む8町村で、地域への学びを深める「ふるさと創造学」と、話し合いや交流で学びを深める「遠隔合同授業」に取り組んでいる。
「ふるさと創造学」では、ローカルで多様な探求的学習を展開。テーマや手法は各校自由だ。被災後も、地域は子供たちの総合的学習に非常に協力的で、避難指示解除後の富岡町内の解体された家屋に印をつけていく学習レポートなどを作成した生徒もいる。
「遠隔合同授業」では、極小規模校同士がテレビ会議システムを活用。他校の児童と同じ教室内にいる感覚で話し合いを展開している。課題把握やまとめは各学級で行っており、指導者同士は授業の前後で必ず打ち合わせの時間を確保し、指導内容を検討する。
富岡町内では、富岡校の6年生4人・5年生1人が三春校の6年生3人と遠隔合同授業を実施。相手意識の醸成や積極的な意見交流の面白さへの気付きなど、新たな学びにつながった。
学校統合説明会時、保護者から「地域から学校がなくなるとさらに人口が減少して過疎化するのでは」などの反対意見もあったが、話し合った上で合意を得、学校統合を実施。交流学習や学習支援員・教育相談員の配置、スクールバスの計画的配置と運行、老朽化した小学校に代わる新校舎の建設などに取り組んだ。
新小国小学校は、①小国小学校と小国中学校を結ぶ渡り廊下の設置、②校舎と体育館の一体化、③降雪に対応した屋内駐車場、④8系統11台で運行しているスクールバス乗降のための発着スペース、の4点を実施。
学校統合により、教員などの人的資源の厚みが増し、教職員の力量が向上。学校と教育委員会との関係も強化できた。
送信側の教員が中学校教員の免許状を有するなどの一定の基準を満たす場合、受信側の教員が当該免許状を有していなくても遠隔授業を行える。本年8月21日施行。
日本の少子高齢化は、他国よりも早く進行している。これ以上統合できない1小1中の地域や、統合しても小規模校のままである学校を抱える自治体が多くある。
小規模校は、「集団的学びの展開」や多様な専門性を持つ教職員確保、教職員の職能開発が難しい。ここで1単位学校の教育環境を強化するには、関連組織とのネットワーキングが必要だ。
共同実施や、各学校を巡回し統括職務だけ行う統括校長の配置などネットワークには様々な手法がある。1小1中の学校しかなく1自治体内で学校間ネットワークを確保できない場合は、教育委員会の共同設置や隣接自治体への教育委託など、特定の政策で各自治体が連携する仕組み(共同処理制度)とするなど、都道府県教育委員会の政策支援・仲介を積極的に検討していくべきである。
子供らをいかに未来志向の教育施設・教授法で育てていくかが大切。小国町、香美町、富岡町では、その条件整理が十分にできている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年12月2日号掲載