次年度の予算要求は、6月に公表された「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」(以下、「最終まとめ」)の内容を実現するためのもの。「最終まとめ」は、国の動向を踏まえた課題を解決するために策定されている。
2019年度全国学力・学習状況調査で行っている質問紙調査で、今回初めて「ICT活用」について聞いたところ、「児童生徒のPCなどICT活用への関心が非常に高い一方で各自治体における学校のICT環境整備が十分に進んでおらず児童生徒の関心に応えられていない」ことがわかった。小学校では86・6%が、中学校では78・4%が「もっとICTを活用して学びたい」と回答しているにも関わらず、ICTを毎日活用している教員は1割程度だ。
OECD諸国と比較すると、「中学校で生徒にICT活用をさせている」割合は、日本は47か国中46位。協働的な学びでICTを活用している割合は、日本は圧倒的に最下位だ。
文部科学省では2018~22年度の5年間で地方財政措置を講じている。これは、たとえ財政が厳しくても必要とされる整備を全国で均等に行うために講じられるもの。まずは3人につき1台の学習者用端末整備を求めているが、それを達成している自治体はごくわずか。整備台数は圧倒的に不足している。
無線LANの普通教室整備の目標値は100%だが2019年3月末時点での達成度は4割程度。
普通教室の大型提示装置整備率はようやく5割を超えたところ。100%を早急に達成する必要がある。
今のペースの整備では、目標達成までに10年以上かかる。1人1台端末活用環境に向けては、ビジネスモデルを変えていくしかない。コスト的に普及しやすい端末で、通信ネットワークは高速大容量でセキュリティを担保かつ安定していることが必要だ。これらをすべて実現するためのものを、次年度の概算要求に盛り込んでいる。
GIGAスクールネットワーク構想(375億円)は、学校内の無線LAN環境を強化するためのもの。対象は、スイッチ、ルーター、ハブ、回線工事など。これらを2分の1補助する。無線APは地方財政措置に積算されているため対象外。公立学校の場合は教育委員会が申請する。私立学校も補助対象になるようにする。将来的には10Gbpsでも使えるものを整備することを推奨するが、現状の契約は1Gbpsが現実的であると考えている。
新しい環境を実証・検証するために約20億円を概算要求。
先端技術活用や遠隔教育は継続。新規では1人1台端末環境の実証(7億6500万円)やSINET環境の実証(6億8400万円)など。
ICT活用アドバイザー事業はこれまでの10倍にあたる2億円を概算要求。これまでの方法を一新する。
小中高等学校を通じた情報教育強化事業にも取り組む。
6月には全会一致で「学校教育の情報化の推進に関する法律」が可決し、公布・施行された。学校教育の情報化は、これを推進しないと「法律違反になる」ものになった。
情報化は「面倒なもの」ではない。いつまでも紙のお知らせを配布して回答を記入して紙を集めて集計するほうがよほど「面倒なこと」である。これらに使っていた時間を他のことに使う必要がある。
ベテランの知見を共有できる、教育委員会は学校現場を瞬時に把握できるなど、先端技術の活用は、教員本来の活動を「楽に」「効率化」して「効果を上げる」方向に進めていかなければならない。「使わなければならない」ものではなく「使ったほうが便利」なものである。
10月10日の衆議院予算委員会で萩生田光一文部科学大臣は「令和の時代にふさわしい、なくてはならない教材教具としてICT環境を整備していく」と述べている。
これら先端技術の具体的な活用事例について、2020年度内に「学校現場における先端技術利活用ガイドライン」を取りまとめていく。現在、調査ヒアリングを始めているところである。
教育ビッグデータの在り方についても一定の方向性と結論を示す。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年11月4日号掲載