八戸工業大学は、青森県八戸市に本部を置く私立理工系大学だ。設立は1972年。工学部、感性デザイン学部、大学院工学研究科を設置している。
同学は2014年度・文部科学省大学教育再生加速プログラム「テーマⅡ:学修成果の可視化」に採択され、自主学習力を向上させる取組として、eラーニングの活用を推進。2016年度に開設した「八戸工業大学eラーニング総合サイト」は、高校生および在学生を対象にしたコンテンツで構成した。
高校生向けコンテンツは、国語、英語、数学など9科目の学習ができる「入学前交流講座テキスト集」や、高校科目の内容を動画で学習できる「高校生向け大学入学前お勧めコンテンツ集」(外部サイト)などだ。
コンテンツの1つである「入学前交流講座」については、履修した約60%の高校生が「教科に対する理解がより深まり、勉強できて良かった」と評価。同学工学部 システム情報工学科の小玉成人学務部次長は、「生徒が履修に対して主体性を発揮すれば、入学時の学力向上につながると考えています」と語る。
一方、大学生向けの学修支援eラーニングは「正課授業関連eラーニング教材」「修得因子別学修スキルアップお勧めコンテンツ」「在学生向けリメディアル学修(大学教育を受けるために必要な基礎学力を補うための補習教育)お勧めコンテンツ」「共通基盤教育システム」など。
「正課授業関連eラーニング教材」には、MoodleというLMS(Learning Management System・学習管理システム)を用いて構築した「HIT‐LMS」が含まれている。正課の授業で利用するため、全学生・全教職員が、普段利用しているアカウントで使える環境を整えた。自宅など学外からもアクセスできる。
これらの効果を確認するため、eラーニングを活用している科目と、活用していない科目について調査した結果、eラーニングを活用した科目は、活用しなかった科目と比べて、宿題頻度、宿題取組度、予復習力の3項目において、7・4~16・8ポイントと大幅に上昇していることがわかった。
「宿題頻度が高ければ取組度が上がり、それに伴って予習・復習する力も上がることが明確に示されました。eラーニング活用科目を増やすことで、これら3項目の値を相乗して上げられると考えています」
満足度、関心度、難易度、理解度、学力向上感、口述力、筆述力、知識展開力、教材力においても、eラーニングを活用していない科目と比べて3・4~5・6ポイント高いという結果が示された。
eラーニングを活用している正課教育に関係した授業外学習時間は、週あたり6・66時間から8・1時間へと大きく向上。「学習時間を向上させるには、eラーニングを活用した科目を増やすことも有効だと考えられます」という。
近年注目されているグリッド(やり抜く力)とeラーニングとの関係も調査。eラーニング活用科目が多い1年次では、関係性が2・82から3・0へと向上した。
これらの結果を踏まえ、今後は、学習管理システムGoogle ClassroomやeラーニングプラットフォームMoodleといったLMS利用を促進させるため、教職員に対するマニュアルや指導体制の整備などを予定。
学生がどこでもいつでも、講義資料の閲覧やポートフォリオ(学生自身の活動記録)の利用などが行えるよう、全学的にタブレットPC等の必携化を徐々に進め、無線LANや充電設備の整備、PC利用のためのフリースペースを増加させていく考えだ。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年8月5日号掲載