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教育ICT

統合化型校務支援システムで教員の働き方改革を支援

2019年7月9日
特集:学校経営と学校マネジメント

文部科学省が2016年6月に公表した「学校現場における業務の適正化に向けて」では、教職員が業務に専念できる環境を確保する方策の1つとして、「統合型校務支援システム等を整備し、校務を効率化・高度化する」ことを掲げている。統合型校務支援システム100%の整備に向け、各自治体では新規導入や更新が進んでいる。今期は特に、デスクトップの仮想化やインターネット分離など「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を意識した調達内容としている自治体が多いようだ。

現在、文部科学省は都道府県単位での統合型校務支援システムの共同調達・運用の促進に向けて、岐阜県、奈良県、長崎県、高知県の4県で統合型校務支援システム導入実証研究事業を行っている。

都道府県単位で共同調達・利用等を実現しているのはこのほか、北海道、長野県、群馬県、京都府、和歌山県、鳥取県、福井県、佐賀県など。

  • 山梨県教育委員会=本年4月、統合型校務支援システムの導入・運用等業務に係る一般競争入札を実施。2020年度に「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に基づいたシステム基盤を構築し、県内全市町村が共同利用する統合型校務支援システムを導入できる提案を事業者に求めている。事業者決定は8月以降。
  • 新潟県長岡市教育委員会=現行の校務支援システム更新にあたり、統合型校務支援システム運用等業務委託について4月公告。
  • 茨城県神栖市教育委員会=5月、神栖市統合型校務支援システムの仕様書を公告。本年10月から「EDUCOM マネージャーC4th神栖市版」の運用を開始する。
  • 埼玉県吉川市教育委員会=2018年9月より市内小中学校全校(11校)で統合型校務支援システム「C4th」を導入。グループウェアとICカードによる勤怠管理システムは9月より運用開始。校務支援については帳票を整え本年4月より運用開始。

USB型シンクライアントキーを用いて既存のローカルPCをシンクライアント化し、仮想デスクトップソリューションを導入。教職員1人ひとりに個別に仮想Windowsデスクトップを提供するVDI方式ではなく、Windowsサーバを使用したサーバデスクトップ共有(SBC)方式。「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に則り、情報の重要度に応じて業務エリアを3つに分離し、1台の端末ですべて利用できるようにした。自宅から校務情報へ安全にアクセスできる環境も整備して、本年よりテレワークにも対応。申請制で活用を進めている。システム導入と同時にスクール・サポート・スタッフを全校に配置し、教職員の働き方改革に取り組んでいる。

  • 千葉県君津市教育委員会=学校における校務の効率化及びセキュリティの強化を目的に、校務支援システムを更新するため、本年1月、公募プロポーザルを実施。4月に事業者が決定。
  • 東京都墨田区教育委員会=これまで活用していた校務支援システムのサポート終了にあたり、2020年度より新たな校務支援システムの運用を開始する。事業者は東京書籍。墨田区では同社の意識分析システム「i-check」を活用しており、そのデータ活用を活かせる仕組みであることが評価された。
    デスクトップ仮想化(VDI)を導入済み。2020年度にサーバやPC等機器更新のタイミングで、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラン」に対応した仕組みを本格的に構築する予定。
  • 福岡県苅田町教育委員会=小中学校校務支援システム導入事業に係る公募型プロポーザルを6月に実施。2020年4月から本格運用を予定。現行システムの開発元が事業を撤退。新たな仕組みを導入する。事業者は8月に決定。
  • 北九州市教育委員会=2019年6月、校務支援システム構築・保守運用業務委託について一般競争入札を実施。現行システムのサポート終了に伴い更新する。開札は8月7日。幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校(小学部・中学部・高等部)及び通級学級、院内学級2期制・3 期制の選択が年次でできることなどを想定。拠点数最大250か所、最大教職員数8500人位上の接続に耐えられるシステムとする。就学システム、人事給与システム、報酬等支払いシステムとの連携も想定。

2022年度に「校務系システム」と「校務外部接続系システム」の分離とシングルサインオンによる認証方式の導入を予定。その際の改修を最小限に留める提案を求めている。2020年9月部分稼働、21年4月本稼働を予定。

  • 熊本県八代市教育委員会=データセンターを活用したクラウド方式によるサービス導入に向けて八代市統合型校務支援システム公募型プロポーザルを6月に募集。7月10日に審査結果を公表通知する予定。運用開始は2020年4月1日。学習指導要領の改訂や法改正に柔軟に対応できる仕組みを導入する。
  • 那覇市教育委員会=那覇市校務支援システム導入及び運用・保守業務を公告。2019年11月1日から運用開始。パッケージソフトを基本とし、システムの根幹に関わるカスタマイズは原則実施しない。センター サーバで一元管理。仮想サーバ上で運用が可能なものを導入予定。

埼玉県川越市、埼玉県鶴ヶ島市、広島県府中町などは現在調達中。倉敷市は現在構築中。
次の自治体は今年度から新規システム(更新・乗り換え含む)で統合型校務支援システムを稼働している。青森県青森市・埼玉県吉川市・埼玉県鳩山町・東京都町田市・富山県舟橋村・富山県立山町・富山県南砺市・富山県富山市(小学校)・石川県津幡町・愛知県尾張旭市・香川県三豊市・大阪府豊能町など

 

福島県教育委員会

教育クラウド活用で業務改善
留守番電話も設置

「教職員多忙化解消アクションプラン2018~2020」を2018年2月に策定。「時間外勤務時間1週間あたり11時間以下」「業務繁忙な時期でも1週間あたり20時間以下」「3年間で時間外勤務時間を30%削減」などを目標として取り組んでいる。

この実現に向けて、県立学校の教職員(実習助手、非常勤講師含む)に1人1台の校務用PCを計画的に配備。「ふくしま教育クラウドサービス(FCS)」(G Suite for Education)を活用して資料等を共有する。

2018年度には学校閉庁日を4日間設けた。

留守番電話も設置。

2019年度は新規で、大規模校(小学校)へのスクール・サポート・スタッフを配置。学習プリントの印刷、学年・学級事務(集金、備品管理、教材・教具準備、軽微な事務連絡・調整、調査集計・回答書案作成等)など担当する。

単独で部活動の指導ができる部活動指導員も配置。

統合型校務支援システム等については2020年度の運用を目指して準備中。

千葉県八街市教育委員会

職員室にNASを導入
校長室、事務室、保健室にプリンター

2019年4月1日から統合型校務支援システムの運用をスタート。校務用PCも1人1台更新。センター型基盤システムを更新した。「極力学校には情報資産を残さず、メンテナンスの手間がなく、高いセキュリティと高い可用性を実現しながら利便性が現在よりも低下しない」ものを求め、校務支援システムにアクセスしてもクライアント側にデータが一切残らない仕組みを導入するなど「教育情報セキュリティに関するガイドライン」を参照して整備。

各拠点(市内小・中学校13校、教育支援センター、八街市教育委員会、給食センター、データセンターの17拠点)をVPN回線によって接続。学習系ネットワークと校務外部接続系ネットワークも物理的に分離。PCを持ち出しても職員室以外で利用ができない仕組みとした。校務支援システム用専用ヘルプデスク、リモート保守も導入。

働き方改革を視野に入れ、職員室用NASを導入。校長室、事務室、保健室にはプリンターを導入。校務用にはカラープリンターを導入(いずれも各校につき1台)。

神奈川県川崎市教育委員会

川崎市教育委員会では「教職員の働き方・仕事の進め方改革の方針」を2019年2月に公表した。これは、川崎市の教職員の働き方・仕事の進め方改革の基本的な考え方、当面の目標、取組の視点及び具体的な取組等をまとめたもの。計画的な取組で着実に成果を上げている同市の具体的な取組を紹介する。

川崎市では当面の目標を「正規の勤務時間を超える在校時間が1か月当たり80時間を超える教職員をゼロにする」こととして取り組んでいる。

校務の情報化を推進

2013年度より「統合型校務支援システム」を構築・運用している川崎市では、2020年度に、校務支援システムをより使いやすいシステムに改善し、更なる業務の効率化を行い教職員の負担を軽減する計画だ。

現在、学校では校務系端末と行政系端末の2つの業務端末を利用しているが、より業務が効率的に行えるよう、学校に配置されている業務端末の統合に向けた検討を進めている。合わせて校務支援システムの設計・開発も実施中だ。

ICカードで出退勤管理

2017年度に、休暇届や各種手当の電子申請・決裁・認定処理を行う職員情報システムや、出張命令等を電子上で管理する旅費管理システムを全教職員に導入。事務処理の効率化を図っている。

業務改善に向けて、2019年度から小学校・特別支援学校全校に、留守番電話も設置。全中学校には2020年度から2年計画で設置する。同時期にICカードによる出退勤管理の運用も開始して実体把握に努めている。

教職員事務支援員の配置を拡充

これまで教員が行ってきた学習プリント等の印刷や配布物の仕分け等の事務的な業務を教員に代わって行う教職員事務支援員も配置。2018年度は3校に、2019年度は小・中学校28校に配置して検証。教職員事務支援員が職員室で電話・来客対応や事務作業を行うことから、教頭や教務主任が校内巡回等を行うことができるなどの効果もあった。

2020年度はこれら検証結果を踏まえて整備する。

部活動指導員の配置を拡充

2018年度に市立中学校3校に、19年度に中学校7校にモデル事業として各校1名ずつ配置。配置形式を次の3種類として検証した。▼教員が競技経験のない部活動に配置。指導員が単独で顧問を担当 ▼複数顧問を配置すべき規模の部活動で、教員が競技経験のない部活動に配置 ▼日ごとに様々な異なる部活動を担当

「顧問が不在でも部活動が実施できてうれしい」「わかりやすく、丁寧に教えてもらえるので楽しい」「これまでの部活動の指導時間に通常業務が行えることで、時間的な余裕ができた」と、成果が上がっている。2020年度は本検証を踏まえて配置を検討する。

専門スタッフを配置

外国語指導助手(ALT)については、2018年度91人(小・中学校86名高等学校5名)、2019年度101人を配置。2020年度は113人を配置予定だ。

2018年度は、理科支援員を全小学校、総括学校司書21名、学校司書28名、スクールカウンセラーは全中学校、スクールソーシャルワーカーを各区の教育担当(全8名)に配置している。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年7月8日号掲載

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