全国的に農学系学部の新設が相次いでいる。2012年から今年までの間、7大学が農学系学部を設置した。文部科学省「学校基本調査」によれば、農学系学部の志願者数は2007年では10万4122人だが、徐々に増えて17年には12万8405人となっている。
農学部の人気が高まっている背景には、農学部における「学び」が変化したことが大きい。従来、農学部では、小規模農業と農家経営を主に学ぶことが多かった。しかし、現在では農業や畜産といった食料生産分野をはじめとして、環境、食品、生物・バイオなど幅広い領域が学べるようになった。
近年の農業は、ITやロボットを活用した新しいスタイルの「スマート農業」や、IoT機器によるデータ収集および生産管理システムなどが導入されるようになり、最新IT技術についての授業に注目が集まっている。
幅広い領域が学べる農学部は、就職先を多分野から選ぶことができる点も人気の要因だ。「学校基本調査」によると、農学部卒業生で農業や林業に携わる割合は全体の3%で、多くの卒業生が一般企業へ就職している。
SDGsに取り組む
摂南大学も2020年4月、農学部を新設予定だ。1975年に設立した同学は、大阪の寝屋川と枚方にキャンパスを持つ。現在、法学部、外国語学部、経済学部、経営学部、理工学部、薬学部、看護学部の7学部で学生数は8077人(2019年5月現在)。
新設される農学部は、農業生産学科、応用生物科学科、食品栄養学科(管理栄養士養成課程)、食農ビジネス学科(文系学科)の4学科。入学定員は 340人を予定。
同大学の農学部の特色は、農産物の「生産」「加工」「流通」「販売」「消費」という一連のプロセスとともに、バイオやスマート農業など先端分野も学べる点だ。
グローバルな視点で「食」と「農」に関する知識・技能を持ち、課題解決に取り組める人材を育むことで、近年の農業を取り巻く新しいニーズに応える教育研究を展開。SDGs(持続可能な開発目標)を推進していく。
例えば、3年次の通年授業「スマート農業演習」では、スマート農業の理論と実際を学び、日本の農業が抱える課題とスマート農業の可能性などについて考察を深める。
摂南大学教員による講義にとどまらず、スマート農業関連企業や試験研究機関の研究員をゲストスピーカーとして迎えた講義も行っていく予定だ。
学外の施設視察も予定。植物工場における研修(講義と視察)では、植物工場での環境制御技術や、体内時計制御による生長の最適化などについて学ぶ。農場における、次世代型温室の視察研修も予定。
授業の到達目標は、次の3点を設定している。
①スマート農業とは何かを説明できる。
②スマート農業の具体例を挙げ、その内容と特徴を説明できる。
③スマート農業についての学びから、その可能性について自分の考えをまとめ、述べることができる。
同学の八木紀一郎学長は「AIやロボット、IoTなど、進歩の目覚ましい領域を、農業に取り込みながら、グローバルな目線で新しい農業を切り開いていける人材を育成していきたい」と抱負を語る。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年7月8日号掲載