中教審働き方改革特別部会で委員を務める妹尾昌俊氏(学校業務改善アドバイザー)は「これまでの働き方改革の見直しが必要」と語る。
これまでは、部活動の休業日の設定や校務支援システム導入による効率化など「今ある仕事を前提としながらやり方を見直す方法改善」が中心であった。これらももちろん重要だが、それに加えて部活動の民間への移行や一部の教育活動の縮小、登下校見守り等の地域への移行、採点業務のIT活用やアウトソーシングなど、今ある仕事を減らすことも考えていく必要がある。
働き方改革は「時短」「業務削減」自体が目的ではない。最終目的は、教員の健康と教育活動の充実にある。例えば主体的で対話的・探求的な学びの実施が求められているが、「準備や企画に時間がない」という教員も多い。そこに時間を確保するために、別のものは減らすという発想が必要である。
例えば美咲町立加美小学校(岡山県)では、事務職員のコーディネートでアシスタント(サポートスタッフ)が積極的に活躍している。アシスタントは印刷作業や教材・機材等の準備、学校長集金の業務、各種配布物のグラフ等作成や名簿作成など事務補助のほか九九の暗唱を聞くなど学習支援の一部も支援。教員や教頭の時間の確保につながっている。
働き方改革の推進による負の影響を想定した準備も必要だ。労働時間の上限目安が明確になったことにより、タイムカード等を押した後にも残業をする教員が増えて長時間労働の実態が見えにくくなる可能性もある。実態に即した記録を残す仕組みや体制を徹底する必要がある。
工夫や対策なく校長等が「早く帰れ」と言うだけでは、一般の教員と管理職との関係も悪くなる。今の業務の一部をやめる、もしくは縮小することが必要だ。その際には保護者等との信頼関係を損なわないように、丁寧な説明等が求められる。対話会を開く、啓発情報を映像にまとめてイベント等で流すなどの事例もある。
副校長・教頭らの多忙化も、今後より深刻になる可能性がある。仕事を部下や同僚にふれず、管理職が仕事を負担するという事態も生じかねない。特効薬はないが、サポートスタッフの活用や事務職員との分担・協業などを進めていかなければならない。
もう1つの積み残し課題は、教員の休憩時間が取れないという問題だ。トイレに行く暇もないと言う小学校教員も多い。これは、給食や掃除、昼休み中の見守りなども勤務となっていることが影響している。学校給食をやめるという選択肢がない以上、業務改善では限界がある。ランチスタッフ等教員以外のスタッフの配置や教職員定数の改善なども同時に進めていくことが求められる。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年2月4日号掲載