江南市教育委員会では、平成17年に教職員用PCと統合型校務支援システム、平成21年に外部データセンター管理ほかの整備などインフラと教職員環境を中心にICT整備を進めてきた。平成29年度からは、授業でICTを活用できる環境整備の強化を進め、全小中学校(小学校10校、中学校5校)の教員に、授業用タブレットPC、全普通教室に大型提示機器(プロジェクターとマグネットスクリーン、校内情報配信システム)、児童生徒用に可動式タブレットPCを整備した。本整備の目的と現在の活用の様子、今後の計画について、市教委教育課の稲田剛課長、伊藤勝治管理指導主事、瀬上圭太指導主事に聞いた。
平成29年夏、江南市の小学校10校では、校務用のノートPCとは別に、全教員211名に授業用タブレットを配布してプロジェクターとスクリーンを全普通教室に設置した。
授業用タブレットから画像を大型提示装置に提示できる校内情報配信システムもセットで常設。授業支援システムと連携できる画像転送機能付き無線アクセスポイント(AP)は、全普通教室に211台、特別教室の移動用30台、職員用10台の計251台だ。
プロジェクター、無線AP、画面転送システムはカートにセットし、1ボタンでセッティングできる。
PC室には、児童が普通教室でタブレットを活用できるように、キーボード脱着式のタブレットPCを整備した。児童は、タブレットだけを持って普通教室で活用している。初期段階としてグループ活動での利用を想定しているが、将来1人1台配布することを見据えて、1クラスではあるが1人1台の環境も整備した。
小学校に続き、平成30年度は中学校でも整備を進めた。
全教員の授業用タブレット198台と提示環境、無線AP等の整備は小学校と同様だ。異なる点は、PC室はデスクトップPCとし、それに加えて各校40台の可動式PC(タブレット)を整備している点だ。
授業用タブレットの導入により、従来から活用している「NHK for School」やデジタル教科書(小学校=外国語活動、中学校=国語、理科、英語、美術)が、より活用しやすくなった。児童のノートをカメラ機能で撮影して提示し、考え方を比べるなど授業の幅も広がっている。
かけ算の九九や英語の発音など、タブレットで提示できることが増えたため、教員が黒板に向かう時間が減り、児童の様子をじっくり見ることができるようになった。
「タブレットの活用により、視覚に訴える情報提供が増え、子供を見取る時間や子供たちが考えを深める時間が生まれ、授業改善に確実につながっていると感じる。教員には、楽しみながら様々な活用に挑戦してほしい」と手応えを感じているところだ。
江南市の教員用タブレットは職員室だけでなく、普通教室や学校内で統合型校務支援システムを安全に利用することができる。これは「EDUCOMマネージャーC4th」(株式会社EDUCOM、以下、「C4th」)の新機能「EDUCOM C4thポータブル(以下、「C4thポータブル」)」によるものだ。
各教室で、授業用タブレット上で出欠を入力、その内容が「C4th」の出席簿の機能に瞬時に反映でき、「いいとこみつけ」の機能も授業用タブレットで校内どこでも手軽に活用できる。
教室で連絡をしながら児童生徒の出欠を入力するとシステムに反映できるので、朝早い段階で、全校の出欠状況の把握が可能だ。
「C4th」の掲示板から児童生徒に提供したい情報のみを抽出して公開できる子供向けグループウェア「EDUCOMスクールネット」の内容も授業用タブレットで提示できるので、職員室で児童生徒への連絡事項のメモを取る必要がなくなり、朝学活の連絡の効率化を図ることもできる。
「既に浸透している統合型校務支援システムをタブレットで利用することで、タブレットの授業活用がより円滑に進むというメリットもある。今後、これらの活用について、教職員の負担軽減につながる方法を検討し、子供たちと向き合う時間や授業準備などの時間を生み出していきたい」と語る。
予算確保については、首長の理解を得られたことで進んだ。
「文部科学省『平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針』が公開されたこともあり、PC室の機器の更新のタイミングで、首長に提案した。子育て世代にとって教育施策は有効であり、学習環境を整えることで子育て世代の呼び込みや定住につなげていきたいと考え、首長の後押しを得た」
2年間で環境が大きく変わり、手応えを感じているところだ。
「8割の教員が週3回程度、授業でタブレットを活用しており、自作教材の作成も積極的に行われている。教員主導の活用頻度は予想以上に高く、教育委員会としても嬉しく思っている」と語る。
現在は、導入されたばかりの授業用タブレットや児童生徒用タブレットを授業でどう活用していくか、事例を収集し、年数回の教師力向上セミナーなどを実施しているところだ。「今後、さらに児童生徒のタブレット活用を促進すると共に、統合型校務支援システムとの連携機能の活用についても周知していきたい。現在のICTの活用が浸透した後には、次の段階として、文部科学省『ICT環境整備方針』に倣った計画について検討する。子供自身が未来を切り開く力を育み、江南市に住んでよかったと感じてほしい」と話した。
教育家庭新聞 新春特別号 2019年1月1日号掲載