千葉大学は、千葉市に本部を置き、10学部、11研究科を有する国立総合大学だ。
千葉大学教育学部附属中学校長の藤川大祐教授(千葉大学教育学部)は、独自に開発したITツール「AIAIモンキー」を活用し、学生の討論を支援するシステム構築のための試みを行った。
AIAIモンキーは、小学校から大学までの授業における「話し合い活動」や「討論」をサポートするツールだ。藤川教授が株式会社アクティブブレインズとともに開発したもので、「ホットワード分析」と「カテゴリ分類」の機能を持つ。ホットワード分析は、学生が書き込んだ意見を形態素分析し(自然言語を言葉が意味を持つ最小単位にまで分割する技術)、助詞、助動詞、形式名詞など以外の語の登場頻度に応じて、大きさの異なる円で表示する機能だ。
カテゴリ分類については、意見の記入者が、記入時にカテゴリを選ぶようになっている。
授業を担当する教員は、授業の前に「発問」と「意見分類」を入力する。授業では、学生が各自のタブレットやPCを使って、討論テーマに対しての自分の意見を入力。学生の入力が終わり、教員がボタンをクリックすると、学生の意見の分析結果が表示される。
各学生も自分のデバイスの画面で、分析結果やほかの学生の意見を見ることができる。
「形態素解析などを活用した意見分析ツールは、多面的・多角的な議論をするために必要だと考え、このツールを開発した。もともとは、小学校の道徳授業用を想定していた」という。
藤川教授は、昨年10月から今年1月にかけて、大学の授業において、AIAIモンキーを使い、同ツールの可能性を検討した。
授業は、藤川教授が担当する「メディアリテラシー教育」(学部2年生~大学院生が対象)で、受講学生は125人だ。授業は計10回行った。
「100人以上の授業でも、学生は多様な意見に接し、ほかの学生と交流できた。大人数の授業でも、多様な意見を多く採り上げられる点がメリット。学生は、他の学生の意見を読むのが面白いようだ。この方向を突き詰めていくと、教室での討論はSNSでの意見交換に近づく」と語る。
平成29年2月から3月にかけて、千葉大学教育学部附属中学校と同小学校において、各2回ずつ、AIAIモンキーと、独自に制作した動画教材を使った道徳の授業を行った。意見分析ツールを利用して、キーワードやカテゴリを入り口に、他の児童生徒の意見を読むことや、自分の意見が読まれることが、児童生徒にとって肯定的に受け止められることが分かった。
今後、AIAIモンキーを活用しながら、初等中等教育での形態素解析を活用した語彙学習に関するシステムの開発も検討している。
意見分析ツールにおけるAIの活用について藤川教授は「今後、検討が必要だが、現時点ではレコメンド機能にAIを活用することが考えられる」と話す。
具体的には、書かれた意見について、授業の中でどの程度貢献したかを機械的に評価し、AIに学習させる。そして、学生が書いた意見をAIが評価し、一定以上の評価を得た意見をランダムにレコメンドするというもの。意見分析ツールにより、授業における討論が、さらに充実していきそうだ。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年11月5日号掲載