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教育ICT

次世代型PC室【提案】BYOD環境を活かす

2018年10月1日
特集:文理融合でIT人材を育む

学習指導要領総則では小中高を通して「情報活用能力」は各教科で育むべき資質・能力として位置付けられており、3クラスに付き1クラス分の学習者用PC整備が必須となった。市販されているディスプレイや書画カメラの4K化も進む中、学校のICT環境も変革が求められる。次世代型「PC室」及びICT環境はどうあるべきか。ICTを活用した教育環境デザインを研究している元高等学校情報科教諭の竹中章勝氏(青山大学客員研究員、畿央大学現代教育研究所客員研究員、奈良女子大学・奈良教育大学非常勤講師)に聞いた。

高等学校の理想はBYOD

新学習指導要領ではどのような学習を求めているのか。小学校のプログラミング教育に注目が集まっていますが、その反面、小中高を通した情報教育の重要性への言及が隠れてしまいがちであると感じる場合があります。これらを読み解くことでICT環境のデザインが見えてきます。

大学入試科目において情報科を取り入れる方向が決まっており、高等学校においては、情報端末で自分の思考を整理したり表現したり、資料をまとめたりポートフォリオとして記録を残すなどの様々な活用を通し、「情報活用能力の育成」が期待されています。各家庭での負担額の問題もありますが、自分が慣れているアプリケーションなどの環境があり操作方法に迷わず常に自由に活用するためにも「自分専用の端末」の所持=BYODが理想となるでしょう。

そのとき選択すべき端末は、思考ツールとして画面を見ながら思考を深め、操作しやすく、思考のアウトプットがしやすいノートPCです。各個人でもつ端末は高価で高機能である必要はなく、持ち歩いて人が常に操作できることがポイントです。スマホやタブレット等はビューワレベルでの活用に留まりがちで、高校生が思考を整理しながらアウトプットをタブレットだけで行うのは難易度が高くなります。OSをWindowsにするかMacにするかについては個人の選択で良いでしょう。Chromebookの導入・活用も増えているようです。

BYOD環境を活かすPC室に

「電子黒板1~2台、生徒全員分の高解像度ディスプレイ&eGPU、高スペックの共有マシン数台」を高等学校のPC室環境として提案

「電子黒板1~2台、生徒全員分の高解像度ディスプレイ&eGPU、高スペックの共有マシン数台」を高等学校のPC室環境として提案

BYODを前提とした高等学校のPC室環境としては「電子黒板1~2台、生徒全員分の高解像度ディスプレイ&eGPU(外付けグラフィックス処理装置)、共有用として高スペックマシン数台」を提案します。

PC室は、情報科を始めとした、より「情報デザイン」や「情報の科学的理解」を進める場となるでしょう。動画編集を含めて創作活動や協働作業をする場合、全員分のディスプレイが欲しい。28インチ程度で高解像度のディスプレイを、自分が持ち込んだノート型端末とつないで制作や表現活動、協働学習に取り組む。デスクをフラットで活用できるように、ディスプレイを机の中に収納するもしくは昇降できればベターです。

さらに、自分のマシンでは動画編集などでパワーが不足する事態に備えてeGPUを人数分用意しておきます。近年は3DゲームやVR化、高解像度化が進み、GPUにより動作するアプリケーションが主流となりつつあります。eGPUを用意してPCに接続すれば、高解像度の外付けディスプレイにつなげて映像などもスムーズに編集できます。

さらに、スペックの高いデスクトップタイプの共有マシンを数台用意。より本格的な動画編集や3D画像編集、新指導要領で取り入れられる統計の学習などに特化したアプリケーションをインストールするなどグループ学習に活用します。

協働作業や個別作業が中心であっても、全員が前を向く瞬間が必要になります。電子黒板機能を持つ大型ディスプレイは、一斉に全員に対して説明する、各生徒の作品を提示するためにも必要です。生徒がプレゼンテーションする場合にも活用できます。

BYOD端末をLTEとするのかWi―Fiとするのかは各学校によりますが、このような環境であれば、生徒自身の文房具としてのこれまでの学校が設置してきたコストを低減しながら新しいICT環境を提供することができます。普通教室や校内のオープンスペースでも簡単な作業ができるスタンドデスクやベンチデスク、ネットワークがつながる環境にしておけば、調べ学習や隙間時間を活用したドリル学習、何より生徒同士でディスカッションしながら課題に対する思考整理や表現活動の続きなどに自由に使うことができます。高等学校では数学に統計学習が入り、地理総合ではGISなど電子地図情報システムの活用も求められることから、「学校に1室のPC室」では移動教室を含めた時間割作成が難しいため、こういった教室の複数設置を視野に「BYODを視野に入れたICT環境」をデザインしたいところです。

小中学校のPC環境

では小学校のPC室はどうあれば良いのか。従来のPC室からPCが消えた学校もあるようです。学習者用PCをタブレット等とした場合、国語科で求められているキーボード入力の練習ができ、ロボットやセンサーボードなどを接続したプログラミング学習ができる環境としてPCを用意することがベターと言えます。

中学校は小学校と高等学校の橋渡しとなる学びが求められ、かつ部活動も始まり生徒も忙しくなります。技術科における情報教育はこれまで以上に重要になる点から、PC室は、安定したPC環境を活用できる場所として用意するべきと言えます。

技術科頼みの情報教育から各教科への学びと広げるためにも、自宅にタブレットPCなどを持ち帰り学校の学びを自宅でも取り組める環境が求められるところです。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年10月1日号掲載

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