科学技術振興機構(JST)は9月17日、「国際科学オリンピック日本開催」を記念したシンポジウムを東京大学本郷キャンパスで開催した。国際科学オリンピック参加者による講演やパネルディスカッション、ワークショップなどが行われ、会場には小中高校生や保護者が多数参集した。
第18回国際情報オリンピック日本代表で現在Preferred Networks執行役員の秋葉拓哉氏は幼い頃から「ものの仕組み」に興味を強く持っており、独学でプログラミングを学んだ。中学校の選択基準は「パソコンクラブが最も盛んなところ」で、麻布中学校・麻布高等学校(東京都)を選択。国際情報オリンピックの国内予選で優勝し、国際大会(メキシコ大会)に参加。「参加した4人で最もプログラミングを勉強したのは自分であるという自負があったにも関わらず、メダルを獲得できなかった」と語る。メダルを獲得したのは、数学オリンピックなどで成果を上げていたメンバーだ。「情報オリンピックは、プログラミングとアルゴリズムの複合競技。アルゴリズムの出来で完成したプログラミングの完成度が大きく変わる。この部分で数学オリンピック経験者に遅れをとった。プログラミングにおいてアルゴリズムは最も重要。情報オリンピックの参加で何が自分に不足しているのかを知ることができ、情報科学という分野を認識できた」
大学生時には国際大学対抗プログラミングコンテスト「ACM―IPCP世界大会」で銅メダルを獲得。このときのチームメンバーとは情報オリンピックで出会った。大学院ではアルゴリズムで博士号を2年で取得。東京大学で総代も務めた。
卒業後、国立情報学研究所を経て現在、株式会社Preferred Networksでディープラーニングに関する研究に従事。社員のうち8名が情報オリンピック経験者でもある。「日本で情報オリンピック世界大会が開催され、小学校からプログラミング教育が始まり、プログラミングは学ぶべき意味があるものと社会的に認識された今の状況は大変羨ましい。メダルを獲得できなかったとしても情報オリンピックに挑戦する価値は大きい」と語った。
パネル討論はジャーナリストの池上彰氏がモデレータとして登壇。
第39回国際化学オリンピックメダリストで東京大学助教の廣井卓思氏は「トップになれるジャンルを探して化学にたどりついた」と語る。化学オリンピックのほか、情報や物理オリンピック、小説や詩のコンテストにも挑戦。学生時代から助教を務め現在、4年目。「やるかどうか迷ったら、やる」「まずは好きなことから」とアドバイスした。
第18回国際生物学オリンピックメダリストの本多健太郎氏は「一歩先にある『わからないこと』にたどりつくために社会全体で背中を押す仕組みがあれば。まずは社会の最小単位である家庭で背中を押して」と語った。
プログラミングや生物学、化学に関するワークショップでは国際科学オリンピック参加者やメダリストが講師を務め、多数の小中高校生が参加。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年10月1日号掲載