文部科学省は9月14日、遠隔教育の推進に向けた施策方針を公開し、遠隔システムが効果を発揮する基盤整備の推進を求めた。小中学校と高等学校での遠隔授業の狙いの違いや、教員研修など会議での活用も例示。環境整備については常設することを推奨した。
本方針では学校における効果的な遠隔授業について、次の3つに類型化。▼合同授業型=当該教科の免許状を持つ教員が複数の教室の授業を遠隔でつなぐ。小規模校同士、一定規模の学校と小規模校、本校と分校をつなぐなど ▼教師支援型=ALTや博物館・美術館等専門家と遠隔で協働 ▼教科・科目充実型=教員(当該教科の免許状の有無を問わない)の立会いの下、当該教科の免許状を保有する教員が遠隔で授業を行う。高等学校の全日制・定時制課程と特別支援学校高等部において一定の要件を満たす場合、単位認定が可能。
中学校段階においては今後、「合同授業型」や「教師支援型」を、高等学校段階では「教科・科目充実型」を一層推進。
不登校児童生徒や病気療養児など様々な事情により通学が困難な場合も生徒の学習機会の確保を図る重要な役割を果たすと指摘している。
日常的に遠隔教育を実施するためには、特別教室や空き教室等を活用して遠隔教育専用の教室に必要な環境を常設することを推奨。
学校規模が大きく1教室で不足な場合、教室に常設することで朝の会や帰りの会など授業以外の短い時間を有効に活用して交流できる。
音声の乱れや遅延は、授業の進行に大きな影響があり、マイクやスピーカーの選定・調整は重要。マイクについては、用途に応じて指向性タイプと無指向性タイプを使い分け、ミュート(無音化機能)やエコーキャンセラー(反響音除去機能)の機能を有するものを選定する。
遠隔システムは比較的大容量の帯域を必要とするため、全体の帯域を確保する。各学校から直接インターネットに接続する場合、必要な帯域を確保しやすいが、VPNを利用している場合、ネットワーク機器が高負荷の状態になる可能性がある。遠隔システムが使用するネットワークを分離したり、QoS(=Quality of Service)の設定を行うなどの対策も有効。遠隔システムは授業中を通して安定した通信が求められるため、有線LANの利用が望ましい。
ICT支援員の配置は必須でありICT活用教育アドバイザー派遣制度の利用も有効としている(平成29年度は、全国48自治体へ派遣)。
遠隔会議には次の仕組みがある。
▼Web会議システム=PCにソフトウェアをインストールし、カメラやマイク等を接続して利用するもの。費用が安価な場合が多く導入しやすい。ネットワークにつながる環境であれば屋外でも使用できる
▼ビデオ会議システム=専用端末を大型提示装置につないで利用。費用が高額となる反面、音声や映像の品質が高く、操作が簡単。
大型スクリーンと高輝度プロジェクタによる等身大サイズの投影を行うなど、高性能・高機能な環境を整備することで同じ教室で授業を受けているような臨場感を重視した構成とすることも可能。
各種会議や研修等の場面で遠隔システムを活用することにより、移動による時間や コスト、負担等を軽減できる。
文部科学省は年度内に複数回、遠隔教育フォーラムを実施して好事例の積極的な発信等を行う考えだ。
平成31年度概算要求では「学校における未来型教育テクノロジーの効果的な活用に向けた開発・実証推進事業」を盛り込んでおり、継続して事業を実施。遠隔教育の更なる充実につなげる。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年10月1日号掲載