創立百年を超える歴史を持ち、理工学分野における人材を輩出している東京電機大学は今年4月から、システムデザイン工学部と情報環境学部に在籍する約200名の学生を対象に、両学部の英語の授業において、AI英会話アプリの使用を始めた。
使用しているアプリは、スタートアップ企業であるappArray(アップアレイ)が開発した「SpeakBuddy(スピークバディ)」。同社によれば、大学の英語授業において、AI英会話ツールを導入するのは、東京電機大学のケースが日本で初だという。
東京電機大学では、これまでも英語学習において、コンピューターを利用したEラーニングやiPadを活用してアクティブラーニング形式で行うなど、ICTを活用した授業を展開してきた。
AI英会話アプリを始め、ICTを積極的に活用している理由について、東京電機大学システムデザイン工学部宍戸真教授は次のように話す。
「当大学の学生の多くが、英語は不得意あるいは苦手と考えていますが、その一方で、コンピューター、ゲーム、スマホなどICT機器には大変興味を持っています。あまり好きではない科目でも、好きな道具を利用して学習することで、英語の楽しさを知ってもらい、将来、グローバルエンジニアとして世界的に活躍できる人材に育ってもらいたいという思いから、ICT機器を英語学習に積極的に利用しています」
AI英会話アプリ「SpeakBuddy」は、宍戸教授が担当する「口語英語Ⅰ」と「口語英語Ⅱ」で導入している。
授業時間は1回100分だ。短いビジネス英会話のスキットを、毎授業6つから8つ学習する。
スキットごとに、アプリを使い次の学習を繰り返す。この学習に70分ほどを充てている。
授業の流れは以下のようにしている。①単語の提示 ②単語練習問題 ③リスニングモードで会話全体の流れを確認 ④会話モードを各自で発話練習 ⑤穴埋めモードを各自で発話練習 ⑥学生同士でペアワーク(会話を人間同士で練習)
スキットの学習のほか、適宜、音声や発音の解説、発音練習なども行って集中力が継続できるように工夫。AIアプリでの学習のほか、ネットで提供されているサービスを使って、単語、文の語順整序、会話、TOEICのリスニング練習なども行う。
都合の良いときに学習できると好評
AI英会話アプリを導入した効果については、およそ200名の学習者の中から協力してくれる学生約50名を募り、5月と12月にOPIcとTOEICを受験し、スコアを比較して、導入効果を分析することになっている。
「現在5月の結果が出ており、12月には2回目の試験結果が出るので、スコアを比較し、効果分析ができると思います」(宍戸教授)
導入から約2か月たった5月下旬に、学生約200人を対象にしたアンケートによれば、「AIを使った英会話アプリについて『良い』と感じる点」について、117人が「自分の都合の良いときにいつでも会話できる」、111人が「間違っても恥ずかしくない」、85人が「同じ会話を繰り返すことができる」と回答した。
今後は、日本人が話す英語の認識に長けた音声認識エンジンを利用して、新しいアプリを開発することを計画しているという。
「AIはこれからさらに進化します。決まったフレーズを繰り返し発音するだけにとどまらず、自由に会話する話し相手になるのは、それほど遠くありません」と話した。
(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年9月3日号掲載