1947年に創立した京都外国語大学は、国内で最初に設立された私立の外国語大学だ。
これまでは単科大学であったが、今年度、新たに国際貢献学部を創設した。
同学は「IR(Institutional Research)」を積極的に推進し、学修成果の可視化や大学運営に必要な調査分析など、多面的にIR活動を進めている。
IRとは、大学の研究、教育、財務、社会貢献などに関して、情報収集や調査活動を行うことだ。
近年、大学の組織運営や教育改革において、各種データの重要性が再認識されてきたが、それが「IR」という形で注目されている。
同大学がIR活動を進めるにあたって課題だったのは、学内の各部署にデータが散在していたことであった。
「大学内にあるデータは、形式が一定ではなく、再利用可能な形式で保存されていない、データ自体の存在が相互に不可視である、データを一元的に集約し管理する主体がいないなどの問題がありました。そこで、大学内のデータの洗い出しと整理を行い、一元的に『IRデータベース』として集約し、定期的に同期するシステムを構築しました」(京都外国語大学総合企画室 IR推進グループ 西出崇講師)
現在は、入学年度別退学者数の推移や、TOEICスコア点数分布を詳細にクロス集計して分析したり、高校別入学情報や、就職に関する情報などを容易に閲覧できるようにし、教育の現場で活用している。
データを使って分析した結果は、BI(Business Intelligence)ツールを用い定型レポート化して、ウェブベースで教職員に提供している。
「これまでは職員が手間をかけて集計し、資料作成を行っていましたが、新たに構築したIRシステムによって大幅に効率化が進むとともに、横断的なデータを用いた情報提供も可能となりました」(西出講師)
オープンソース製品を利用することで、格段に低コストで構築・運用できるようになった。
システムは独自に開発したもので、システムの内容については、すべて学内で把握しているため、教職員などからの分析やデータ提供のニーズに対して、迅速かつ柔軟な対応も可能だ。
今回のIRシステムは、効率的なIR基盤を整備した点が評価され、日本データマネジメントコンソーシアム(JDMC)が主催する「第5回データマネジメント賞」で「アナリティクス賞」を受賞した。
「今回の受賞は、本学のIRの取り組みがデータマネジメントという観点で一定の評価がされたものだと考えます。学内にはまだ利用されていないデータが数多くあり、必要なレポートも十分に整備されていません。今後も、よりよい大学運営や教育改善につながるIR活動のあり方を模索していきたいと思います」(西出講師)
同大学のIRシステムは、学内の資源と組み合わせて独自に構築している点などを含めて、大学のIRシステムとして、先進的な取組であると言えるだろう。(蓬田修一)
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年5月7日号掲載