「教育は愛なり」の建学精神を持つ広陵高等学校(広島市・國貞和彦校長)では学力向上を目的に平成25年度からICT環境の整備に着手しており、生徒用タブレット端末も順次整備中で、現在計800台を学校で管理している。本年度は授業改善を目指し、全教室に超単焦点プロジェクターを設置。同時に、同校のアイデアや要望を盛り込んだ「レール式スライドスクリーン『Ninja』」も設置し、授業支援ツール「PenPlus Classroom」の活用も始めた。整備の目的と活用、効果について、國貞校長、落合幸良教頭、堀正和教頭に聞いた。
同校の「ICT改革元年」は平成25年度だ。
ICT教育推進委員会を立ち上げ、落合教頭が推進役となって教員用情報端末や生徒用端末、無線LANの整備を開始。教員はペーパレス会議や教務事務システムの活用を始めた。
生徒用端末を活用した個別学習のためのeラーニング教材は、英語と数学のカリキュラムにも組み込んで推進。数学では反転授業にも取り組んでいる。
「整備する場合は全教室一斉に進めて同じ環境としたかった。使い勝手や活用の目的、予算との兼ね合いでプロジェクターとスクリーンの組み合わせとした」と話す。
黒板に教員の影が映らない超短焦点プロジェクターを設置。スクリーンは「すぐにセッティングでき、すぐに片付けることができる」「絶対に落下しない」などの要望を適える形で、全国初の「レール式スライドスクリーン『Ninja』」が生まれた。
国内大手映像メーカーの協力により、黒板上下にレールを設置してスクリーンを引き出し、固定できるもので、上下にレールがあるため、湾曲黒板でも歪むことなく滑らかにセッティングでき、片付けも片手のみで一瞬でできる。常設だが使用しないときには黒板脇に格納できるので、黒板全面を使うことができる。スクリーンの厚みも0・3㍉と、一般的なマグネットスクリーンよりも厚手の映画投影用を使用。色の再現性が高く、磁力の向上による黒板に対する密着性をアップした特別仕様だ。
化学担当の中村明日香教諭は「全教室整備により、グラフを拡大提示して書き込みながら解説しやすくなった。生徒の顔が上がるのでやり取りが増え、反応を見て自作教材をすぐに手直しし、次のクラスで活用するなど、授業改善にもつながっている」と語る。
スクリーンを一瞬でセッティングしたり、しまったりしやすいことから「スクリーン上に問題を提示」し、スクリーンをしまうと「黒板に記載済の解答が表示される」工夫など、「Ninja」の使い勝手を生かした板書の工夫も生まれたという。プロジェクターと生徒用端末、教員用端末を連携できるので、学び合い活動の促進のため、授業支援ツール「PenPlusClassroom」も活用。サーバ設置なしで、教員用ノートPCから生徒用タブレット端末に教材を一斉配布したり、生徒画面をモニターしたり、生徒の解答を一斉に回収できる。センター試験問題を提示して、その生徒の解答状況を見ながら、理解度を確認しつつ問題の解説をした際には「正解の割合や各自の進捗具合がひと目で分かるので、重点的に説明すれば良い点や、どの生徒に声かけをしたら良いのかがすぐにわかる」という。同校では年に2回、全学年全教科で「授業アンケート」を行っている。センター試験対策を行った進学コースでは、理解度が深まったと感じる生徒が8割と高かった。
英語科の竹本淳一教諭は「普通教室では、音声教材の活用や映像提示の準備に時間がかかっていたが、どの教室でもできるようになり、活用頻度が上がった。これまで板書していた英文も、プリントやデジタルデータを教員用端末から大画面に提示できるので、解説やグループワークの時間をより多く確保できるなど、授業のペース配分が変わり密度を高めやすくなった。スライドレール付きスクリーンと超短焦点プロジェクターの組み合わせも、明るく鮮明」と語る。「PenPlus Classroom」については「記入したまま保存できるので、授業の理解度に従って前の書き込み内容に戻ることができる。次の時間に、書き込みの続きから始めることができる点が大変便利」
担当クラスの授業アンケートでは「文章の重要点がわかりやすい」「問題演習がスピーディーに進む。発音練習の時間が増えた」と好評だ。今後は「スピーキングや会話のやりとりなどを音声や画像クリップにして評価、振り返りに活用したい。1対40での音声指導の難しさをICTでカバーできれば」と語った。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年3月5日号掲載