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教育ICT

校務支援システムで教員の働き方改革へ<前橋市教育委員会>

2018年3月5日
特集:「新しい学び」を創出する

全学校・園と教委各部署を連携
文書収受の運用ルールを整える

今泉指導主事

今泉指導主事

統合型校務支援システムの効果的な運用による働き方改革の推進が期待されている。文部科学省は次年度予算で都道府県レベルでの共同調達を実証する。その動きに先がけ、群馬県では平成19年度、調査書や指導要録などを県統一版としてカスタマイズした「群馬県版校務支援標準システム」として「EDUCOMマネージャーC4th」(㈱EDUCOM、以下「C4th」)を採択。現在県内の約9割の学校が活用している。前橋市でも平成27年度から本システムに切り替え、教育委員会や小中学校等の教職員約2000人が活用しており、働き方改革にもつながっているという。今泉洋一指導主事(前橋市教育委員会学校教育課)に、前橋市の運用のポイントを聞いた。

前橋市教育委員会では、100校プロジェクトに参加した平成6年以来、ネットワーク活用に積極的に取り組んでいる。「平成7年から平成17年まで、市内の学校の多くは、ボランティア団体と多くの先生方との協働作業により各学校の教室に有線LAN配線工事を行っていた。そのような長年の取組から、『つながる』ことの便利さが全教職員に浸透しており、便利になるのであれば、新しいものを積極的に受け入れる素地となっている」と語る。

平成27年度には学校間ネットワークを再構築して、データセンターへ移管。平行して、学習者用タブレットPC、指導者用タブレットPCを整備。校務支援システムを「C4th」に入れ替えた。

「校務支援システムの入替により、指導要録や保健帳票など様々なデータの連携が可能になった。小中学校間でもデータを連携しているため、児童生徒及び教職員の転出入に係る事務処理も、市内間であればボタン1つで反映されるなど校務の情報化による業務改善につながった」と語る。

運用ルールの明確化 的確かつ効率的な処理

校務支援システム更新後、さらに全校活用が進んだのが、文書収受機能だ。

前橋市の特徴の1つが、校務支援システムを、臨時職員を含めて全幼・小・中学校、特別支援学校、高等学校の教職員、教育委員会総務課、教育施設課、学校教育課、青少年課、総合教育プラザ(特別支援教育室、教員研修センター、幼児教育センター)、児童文化センターの職員など、学校と教育委員会が連携して共通のシステムを活用している点だ。

そのため、学校には多くの文書が送信される。そこで、教育委員会からの文書送信は午前中のみとした。

文書ファイルに番号を振り、ファイル名も分かりやすく表示するなどの運用もルール化。学校に届く文書の処理の効率化が大幅に図られ、業務改善につながっている。

例えば事務職員は、その日の午前に届いた各文書から、番号「01」(「01」は文書の鑑に付される)などのファイルのみを選択して印刷。鑑のみ一冊に綴じて管理職に提出する。管理職は、誰宛てにどこからどのような文書が届いているのかを迅速に確認。その後、文書内容の詳細を「C4th」上で確認し、担当者宛てに転送している。また、回答は管理職承認を経なければ送信できない仕組みとなっており、学校から出る文書は管理職が責任を持って確認することが今まで以上に徹底されるようになった。文書提出の締め切りも表示されるため、提出文書の管理も確実に行えるようになった。

ペーパレスで会議を効率化

市内のある中学校では、情報共有を校務支援システム上で行うことで、会議をペーパレス化。情報主任等が「C4th」会議室にその日のスレッドを作成し、そこに皆が検討事項を掲載していくことで、事前に朝の打ち合わせ事項の内容を確認。職員会議も同様に、事前に検討事項を掲載することで、内容を確認できるようになり、会議時間は大幅に短縮された。

教職員の予定や出張も簡単な操作で入力ができ、「C4th」の学校日誌に反映され、印刷できる。各校におけるこれらの取組については、情報主任を中心に校内で組織的に行っており、教育の情報化を支えている。

ガイドライン対応を準備中

前橋市ではこれまで、ネットワークをVPNで授業用と校務用に分離して、セキュリティを確保してきた。

重要データはデータセンターに保存して、データ管理の一元化や情報漏洩防止に努めてきた。さらに、データの重要度によって扱える端末を制限したり、教員の授業用タブレットPCと校務用PCを使い分けたりするなど、実効性や教職員の意識が高まるようなセキュリティ対策を行ってきた。現在は、文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」と市の課題を照らし合わせて、重要度の高いセキュリティ対策の洗い出しと具体的な方法の検討を進めている。

保健管理機能で事務量を大幅減

土屋指導主事

土屋指導主事

養護教諭で構成される「保健管理に関わる帳票等検討委員会」では、前橋市が今まで行ってきた独自の取組を最大限に生かせるように必要な機能を検討し、「健康診断関係」、「保健統計」、「健康観察表」、「保健室利用」、「保健日誌」の導入を決めた。

学校保健の仕事は、事務量が多いと言われている。その1つが、治療勧告書(検診のお知らせ)の作成だ。4~6月の健康診断後、2週間以内に勧告する必要がある。土屋佳子指導主事(学校教育課学校保健係)は「C4th」導入後の業務の効率化について、「健康診断等のデータ入力をすれば、治療勧告書の作成が迅速に行えるようになったこと。担任が児童生徒の保健室利用状況をすぐに確認できるようになり、教育相談部会や生徒指導部会、職員会議などで、欠席状況や不登校の兆候などを一覧表の形で分かりやすく示せるようになったこと」を挙げる。

 

市の学校保健統計作成が2回の会議で終了した

市の学校保健統計作成が2回の会議で終了した

前橋市の学校保健統計の作成についても、大幅に作業時間が減った。

これまで、6人の養護教諭が年4回集まり、各校から提出されたエクセルデータを統合して作成していたが、「C4th」を活用することで、2回の作業で終了し、作業時間の短縮や出張回数の減にもつながった。

土屋氏は、導入後の教職員の意識の変化について、「システムを導入した昨年度は、データ入力に関する混乱があったが、2年目を迎えてデータ入力にも慣れた。入力データについてダブルチェックを行うなどの協力体制が整ってきた」と語る。現在は、データのさらなる有効活用に向け、健康診断結果や保健室来室記録などを学校課題の解決にどのように活用できるかについて、検討を進めている。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年3月5日号掲載

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