2月23日、政府は、教育の情報化に対応するため、「著作権法の一部を改正する法律案」及び「学校教育法等の一部を改正する法律案」を閣議決定した。小中学校及び高等学校において、デジタル教科書の活用を円滑に図ることがねらい。これによりデジタル教科書掲載の場合の著作権等の取り扱いが規定され、教員の授業における使用範囲が明確になった。施行期日は平成31年4月1日。
政府は1人1台の学習者用端末活用に伴い、「デジタル教科書」も正式な教科書であるとする法律案を閣議決定した。
「学校教育法等の一部を改正する法律案」では、必要に応じて小中学校及び高等学校において、児童生徒がデジタル教科書を選択できるようにする。これまで、教科書は紙でできたものと規定されていた。
これにより、「主体的・対話的で深い学び」の観点において授業改善に役立てたい場合などは、教育課程の一部において、紙の教科書と同一内容をデジタル化したデジタル教科書を使用できる。
今後、デジタル教科書のメリットとデメリットについて、実証研究などを通じて検証したうえで、全教育課程での活用や紙とデジタルの選択制などを段階的に実現する考えだ。
視覚障害や発達障害などがあり、デジタル教科書を、タブレット等情報端末の機能により文字の拡大や総ルビ、音声読み上げ機能などを活用することで学習上の困難を低減できる場合、全教育課程でデジタル教科書を使用できる。
紙の教科書は引き続き供給する併用制。無償配布ではなく、使用の可否は設置者(学校、教育委員会)が判断する。
特別支援学校や、工業高校など高等学校の専門教科等において、検定済教科書がない場合等も紙の教科書に代えて「デジタル教科書」を使用できる。
「著作権法の一部を改正する法律案」では、情報技術の進展に伴い、著作権の許諾を得る範囲を見直す。デジタル教科書掲載に係る補償金等の規定(著作権料の新たな算出法)を新たに定めることで、「デジタル教科書」に教科書内容を掲載する場合、新たな許諾は不要とする。デジタル教科書を活用して大型提示装置などで拡大提示することや、自作教材を作成して児童生徒用情報端末に配信できるよう、授業活用等に関わる保証金も規定(35条)。著作者への許諾は不要になる。いずれも算出法を定めた際には官報で告示される。本法案は平成31年4月1日から施行される予定。いずれの法案も成立に向けて準備を進めている。
文部科学省「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議で、座長を務めた堀田龍也教授(東北大学大学院)は、これについて下記のように述べている。
「デジタル教科書を用いた授業は、新学習指導要領が全面実施される2020年度から正式に認められることを目指しています。今回の閣議で決定された学校教育法改正案は、次の通常国会での成立が期待されています。デジタル教科書により、視覚や識字に障害のある児童生徒や、紙の教科書を使った学習が困難な児童生徒が救われることになります。動画等のデジタル教材への自動リンクも実現するでしょう。学習ログの取得により、より細やかに学習の成立を判断できるようになるでしょう」
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年3月5日号掲載