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教育ICT

「高レベル放射性廃棄物」地上管理の是非をディベート

2018年2月5日
千葉大学教育学部
本授業では高レベル放射性廃棄物の地上管理に対して「否定側」の主張が賛同を得た
本授業では高レベル放射性廃棄物の地上管理に対して「否定側」の主張が賛同を得た

千葉大学教育学部の藤川大祐教授は、原子力発電環境整備機構(NUMO)の協力を得、高レベル放射性廃棄物の地層処分問題を題材としたディベートをする授業を平成24年度から行っている。

今年度は昨年10月から全15回の授業「ディベート教育論」で実施。ディベートテクニックの説明に関する講義、NUMO職員等の専門家による原子力や地層処分、地上管理に関する2回の講義などに続き、最後の5回でディベートの準備と実際のディベートを行った。

希望者を対象に、昨年11月に茨城県東海村の日本原子力発電東海第二発電所、青森県六ケ所村の日本原燃原子燃料サイクル施設の見学会も実施。

NUMOは、高レベル放射性廃棄物の最終処分方法として決定されている、地層処分の実施に向けた活動を行っている機関で、活動の一環として、様々な学習の機会を提供する支援も行っている。

論理的な力を育む

議題は、「日本は高レベル放射性廃棄物の地層処分計画を撤廃し、地上での管理を義務づけるべきである。是か非か」。受講する約40人の学生を4~5人の10班に分け、このうち2班が各回で肯定側と否定側を担当した。

ディベートの流れは、肯定側立証3分、準備時間1分、否定側質疑2分、準備時間1分、否定側立証3分、準備時間1分、肯定側質疑2分、準備時間1分、否定側第一反駁2分、準備時間2分、肯定側第一反駁2分、準備時間2分、否定側第二反駁2分、準備時間2分、肯定側第二反駁2分。これまでの講義の内容や学生自身が調べたデータ等を活用したり、相手側の反論内容を予測したりしながら準備し、意見を発表した。ディベートをしない学生は発表を聞き、配布されたフローシートに内容を書き込みながら、どちらの主張に同調できるかを考える。最後にディベートをした学生以外全員が挙手をしてどちらの意見により説得力があったかを判定する。

1月23日に行われたディベートでは、高レベル放射性廃棄物の分離変換技術の実現性や、処分場所により、政策選択の余地を将来に残すかどうかの柔軟性、安全性などの論点で議論が交わされ、多くの学生が「地上管理」の可能性の否定意見に賛同する結果となった。この日、肯定側の一員として発表した教育学部2年生の杉原知行さんは、「データをうまく使えなかった。いかに伝えるかが難しく、支持を得られなかった」と振り返り、「回を重ねるごとに新しい視点が得られ、知識が深まっている」と話した。東海村の見学会に参加した教育学部1年生の千秋瑳和子さんは、「実際に見たり体験したりして考えることは重要。将来子供に教えることを学べるし、若い世代がこうした問題に関わることが大切であると感じた」と語った。

藤川教授は「ディベートをすることで問題の理解がより深まり、伝えたい内容が伝わらなければ意味がないことを認識できるようになる。論理的に討論したり、話し合いをしたり、行動できたりするスキルは、卒業後に教育に携わる学生たちに必要だ。来年度も引き続き行いたい」とした。


■高レベル放射性廃棄物=原子力発電により発生した使用済燃料からウランやプルトニウムを取り出し、再び燃料として利用する原子燃料サイクルの過程で発生する再利用できない放射能レベルの高い廃液をガラス原料と高温で融かし合わせ、ステンレス製の容器(キャニスター)の中で冷やし固め、ガラス固化体にしたもの。日本にはこれまでに2448本のガラス固化体が存在。現在全国各地の原子力発電所の敷地内で管理されている未処理の使用済み燃料を処理すると約2万5000本の存在が仮定されている(平成29年3月末時点)。

■地層処分=地下300メートルより深い安定した地層(岩盤)にガラス固化体を埋設すること。

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年2月5日号掲載

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