運動前に体育アプリの模範映像でポイントを確認した |
全教室に提示環境を整備済の宮城県登米市では今年度、PC室の情報端末更新が終了した。小学校には指導者用デジタル教科書(国語、書写、社会、算数、理科、家庭科)も整備済で、登米市立宝江小学校(遠藤麻由美校長)ではPC室の情報端末を職員室に設置することでさらに活用率が上がったという。今年度から「体育実技スキルアップ支援ソフト」(東京書籍)の活用も開始。今年度は本ツールを活用して「主体的・対話的」な「学び合い」を意識した授業を展開している。同校4年・6年の体育の授業を取材した。
演技を撮影し合って改善すべき点についてお手本動画と比べながら指摘(小4) |
体育館では4年生が、跳び箱の練習の真っ最中だ。
各自4段、5段、6段の跳び箱を前に開脚跳びの横跳び、縦跳び、台上前転を練習している。5分程度の練習で身体が動くようになると石川信亨教諭は各グループに情報端末を1台ずつ渡す。児童はそれを使って友達の跳び方を撮影し合っている。
一通り撮影した後は、自分たちの動画を見返してアドバイスし合う。お手本動画を再度確認しているグループもある。
4段の開脚跳びに取り組んでいたある児童は、既に6段跳んでいる児童に跳び方を撮影してもらい、動画を見返しながらアドバイスをもらっていた。
「バン!と踏み切ってなるべく前に手をつく」「手は勢いよく離す」などのアドバイスに従って練習を続けると、授業の終わりには4段の開脚跳びができるようになっていた。
ゲームを撮影して振り返り、次のゲームの作戦を立てる(小6) |
6年生は、フラッグフットボールのゲーム中だ。フラッグフットボールは学習指導要領にもチームゲームの例示として取り上げられており、「チームで作戦を立てる」ことがポイントの1つ。平成23年以降取り組む学校が増えている。授業者は須藤士教諭。
この日のめあては「短いパスの作戦を立てる」。ゲームの様子は情報端末で撮影し、ゲーム後に撮影した動画を見ながら今のゲームを振り返り、次のゲームの作戦を立てる。
「ここでボールを持っていることがバレている」「次はロングパスを投げるフリをして短いパスで一気にランしよう」など、ぎりぎりまで話し合っている。ボールを持つふりをしておとりが走る、ロングパスかショートパスかわからないように工夫するなど、2回目のゲームは1回目とは異なる作戦で挑んでいる。ゲーム中も「ランあるよ」「カバーして」と多くのアドバイスが飛び交った。ゲーム後、須藤教諭は、各チームの工夫した作戦についてすぐに動画を提示して説明、振り返った。
授業で活用していた「体育実技スキルアップ支援ソフト」は、体育実技のお手本動画を収録しており、自分の演技を撮影してすぐに再生することもできるので、お手本と比較したり、他の児童生徒の演技と比較したりすることができる。撮影や再生も1操作でできる。
4年担当の石川教諭は「授業の冒頭でお手本動画を皆で見てポイントを押さえてから、演技練習に入るようにしている。停止したりゆっくり再生したりするなど、ポイントを示しやすい。練習後に見直すことで、学びがさらに深まるようだ。新学習指導要領にある主体的・対話的で深い学びのきっかけになるアプリである」と語る。体育の場合、同レベル同士の撮影し合いアドバイスし合いになりがちだが、得意な子が不得意な子にアドバイスできるように配慮。このほか理科の実験などでも活用している。
6年担当の須藤教諭は「もともと仲の良い児童たちで、話し合いは活発だが、本ツールで撮影・見返すことで、より的確なアドバイスがしやすくなった。自分や全体の動きを俯瞰できるため、メタ認知しやすいからでは」と語る。他教科では音楽でも活用している。
同校では「体育」を研究教科として主体的・協働的な学びに平成28年度から取り組んでいる。
遠藤校長は「市の方針もあり、登米市の教育ICT環境は恵まれている。『個に応じた指導の工夫』としてICT活用の工夫を考えることは目標の1つ。どのような方法があるか模索していた時に本ツールに出合った。直感的に操作できるので教員も児童もすぐに活用できる。本ツールは体育のほか音楽、理科など他教科でも活用しており、学び合いが自然に生まれ、数値で表せない学習の上達具合を見ることができる点がとても良い。他教科も含め継続して活用していきたい」と語る。
同校のPC室には2in1の情報端末が35台程度整備されている。無線LANも整備済であることから東北学院大学の稲垣忠教授のアドバイスもあり、各教室で活用しやすいようにこのうちの25台を職員室で保管・充電しておくことで、PC室以外での活用が増えた。昨年度は教員の指導用として主に活用していたが、今年度は児童主体の活用にシフトして検証しており、成果も上がっている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年2月5日号掲載