文部科学省は12月26日、「平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針について」(以下、整備方針)を通知した。「学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議最終まとめ」(平成29年8月2日)を反映した国の整備規準「教育ICT環境整備指針(仮)」の公表を待たずして本通知をしたこと、「なぜ整備が必要か」についての理由も盛り込まれていること、「教育の情報化実態調査(速報)」を同時に公表したことなどから、「これらの情報を使って政策説明に活用し、地方財政措置を確保してICT環境を早急に整備してほしい」という考えの表れと言える。「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を踏まえたセキュリティ対策も盛り込まれている。
新学習指導要領ではその学習内容の実現に向けてICT環境整備が必須であることが総則に記載されている。そこで「整備方針」では、「最低限必要」かつ「優先的に整備すべきICT機器とその性能等について以下8つに分けて説明している。
▼大型提示装置▼実物投影装置▼学習用ツール▼学習者用PC(児童生徒用)▼指導者用PC(教員用)▼充電保管庫▼ネットワーク(有線及び無線)▼学習用サーバ(表参照)
設置の考え方 | 機能の考え方 | |
大型提示装置 | 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校の普通 教室(特別支援学級関係室等(通級による指導のための関係室を含む)を含む)及び特別教室への常設 | ① 学習者用PCまたは指導者用PCと有線または無線で接続して大きく映す提示機能を持つもの ②教室の明るさや教室の最後方からの視認性を考慮した画面サイズ ③提示機能は必須。インタラクティブ機能は学習目的により検討 |
実物投影装置 | 小学校及び特別支援学校の普通教室及び特別教室に常設 | 大型提示装置と接続して提示するためのカメラ機能を持つもの |
学習者用PC(児童生徒用) | 3クラスに1クラス分程度の配備。最終的には「1人1台専用」が望ましい。どの学年にどの程度配分し活用するかについては各教育委員会・学校で適切に判断。故障・不具合に備えた複数の予備用も配備 | ① ワープロソフトや表計算ソフト、プレゼンテーションソフト他、教科等横断的に活用できる学習用ソフトウェアが安定して動作する ②短時間で起動する ③安定した高速接続が可能な無線LANが利用できる ④コンテンツの見やすさ、文字の判別のしやすさを踏まえた画面サイズ ⑤キーボード「機能」を有する。小学校中学年以上ではハードウェアキーボードが適当 ⑥カメラ機能 |
指導者用PC(教員用) | 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校の授業 を担任する教員それぞれに1台分 | ① 指導者用デジタル教科書等を活用する場合、安定して動作する ② 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(平成 29 年 10 月 18 日 文部科学省)」を踏まえたセキュリティ対策を講じる ③ その他学習者用PC(児童生徒用)に準じる |
充電保管庫 | 学習者用PCの充電・保管のために必要な台数 | 電源容量に配慮する |
ネットワーク | ①普通教室及び特別教室における無線LAN環境の整備 ②特別教室(PC教室含む)における有線LAN環境の整備 | ①大容量データのダウンロードや集中アクセスにおいても通信速度またはネットワークの通信量が確保できる ② 校内LAN(有線及び無線)は、学級で児童生徒全員が1人1台の学習者用PCを使い調べ学習等のインターネット検索をしても安定的に稼働する環境(※)を確保する※外部ネットワーク等への接続による動画の視聴については、児童生徒全員が学習者用PCを使い同時に視聴することは想定しておらず、大型提示装置により視聴することを想定 ③ 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の検討を踏まえたセキュ リティ対策を講じている |
学習用ツール | ワープロソフトや表計算ソフト、プレゼンテーションソフトなど各教科等の学習活動に共通で必要なソフトウェア | 学習者用PCにおいて支障なく稼働すること |
学習者用サーバ | 各学校1台分のサーバ(当面。将来的にはクラウド活用が望ましい) | ①安全で安定的な品質の通信を確保できること ② 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を踏まえたセキュリティ対策を講じている |
校務におけるICT活用については以下4項目に整理。▼校務用PC▼ネットワーク▼校務用サーバ▼ソフトウェア
校務用PC | 教員1 人1台環境の整備 |
ネットワーク | 成績処理等の校務を行う職員室(校長室及び事務室を含む)及び保健室等への有線LAN環境を整備 |
校務用サーバ | ① 学校の設置者(教育委員会)ごとに1台分の整備 ② 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を踏まえたセキュリティ対策を講じる |
ソフトウェア | ① 小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校における統合型校務支援システムの整備。教員の異動等を踏まえ、都道府県と域内の市区町村との連携により、都道府県単位で の統合型校務支援システムの共同調達・運用に向けた取組を進めることが望ましい ② 小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校におけるセキュリティソフトの整備 |
ICT環境整備促進と同時に必要な対応事項として、各教育委員会及び学校において、新学習指導要領における学習活 動を想定しつつ、ICTを活用した指導方法についての研修の充実や外部専門スタッフの活用(ヘルプデスクやICT支援員)、情報セキュリティの確保、照度を調節できる照明設計、遮光カーテン、無線LAN等のネットワークの活用を想定した回線網の構築やコンセントの配置等についても考慮する必要があるとしている。
本整備方針を受けて、「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」(平成30~34年度)として総務省は単年度1805億円の地方交付税措置を講じた。
文科省担当者は「財務省からは、措置率が低い場合は次年度以降、予算額減もあり得る、と言われている」と語った。
各自治体には本予算の積極的な活用が求められている。
ICT教育環境整備指針については,大臣との調整の結果、第3期教育振興基本計画に書き込まれたことと、地方交付税交付金が1805億円に増額されたことをもって、「指針」としては出さないことに決定。
以下が最終版となる。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1399902.htm
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年2月5日号掲載