江原教授は「ロボットの限界を考えつつ、アプリに新しい意味を持たせることが重要」と語る |
専修大学ネットワーク情報学部の江原淳教授のもと、学生たちがPepperを活用して、ロボットと人間が共存する世界の実現に取り組んでいる。江原教授と学生に取材した。
アプリ開発が鍵を握る実世界のネットワーク化
アプリ開発に取り組むようになった理由を、江原教授は次のように説明する。
「人はネットワークから得られた情報を多様に解釈することで、創発性が高まります。従来はそれがディスプレーを介して起きていましたが、今はWiiFitやポケモンGOのような実世界インターフェースになり、いずれは実世界自体がIoTでネットワーク化していくと思われます。これは自然に実現されるわけではなく、意味のあるアプリケーションが普及することで、徐々にシフトしていくと考えています。そこで、ロボットによる実世界インターフェースで、技術の限界を踏まえながら、アプリにどう新しい意味を持たせるかが重要だと考え、プロジェクトを始めました」
プロジェクトは、学生が発案して自主的に実行する典型的なPBL(Project Based Learning、プロジェクトをベースにした実践型・参加型の学習形態)科目だ。
学生はアプリ開発を通して、コレグラフ(Pepperアプリを作るためのプログラミング・ソフトウェア)やPython(汎用プログラミング言語)をはじめ、情報分析、課題設定、プロジェクト管理などを学んでいる。
江原教授のプロジェクトではこれまで、Pepperを使って、歌や動作でスポーツの応援をするアプリ、イベント来訪者に場所や内容を案内するアプリ、年配者らの体調を記録・診断するアプリなどを開発してきた実績を持つ。
Pepperでしかできないアプリを
今学生が取り組んでいるのは「娯楽」「介護」「案内」をテーマにしたアプリ開発だ。プロジェクトに参加する9人の学生が、3人ずつ3つのグループに分かれ、アプリ開発に挑戦している。
娯楽では「Pepperならでは」の楽しさを追求し、Pepperに踊りを踊らせるアプリを開発中。日本の伝統的な踊りの完全再現を目指している。
介護では、認知症予防のために会話をしたり、付属センサーを使って介護者の状態を把握し、そのデータを介助者らへ送信することなどを念頭に開発を進めている。
案内では、専修大学への来訪者(入学を考えている高校生やイベント時の訪問者など)に向けて、専修大学の施設について、Pepperがしゃべったり画面に映し出したりして伝えるものとした。
プロジェクトに参加している学生からは、次のような声が寄せられている。
「プロジェクトに参加する前は『Pepperを使って何かをする』という漠然とした内容だったので少し不安がありましたが、参加してみると『こんなことをPepperでやれたら面白そう』という考えがたくさん浮かび、プロジェクトに対する期待がふくらみました」
「Pepperにしかできないことを考えるのは少し大変でした。スマホでできるようなアプリではPepperで行う意味がなくなってしまうので、その部分はメンバーでよく話し合い、時間をかけて作業しました」
今年7月、アプリ開発の中間発表を行った。今後は今年12月の最終発表に向けて、アプリの完成度を向上させていく。最終的には、実際にアプリストアで販売できるだけの品質を持ったアプリにしていく考えだ。
【2016年11月7日】