東京電機大学情報環境学部土肥紳一教授は、プログラミング入門教育を終えた学生を対象に、Arduino(アルドゥイーノ)を活用した講義を実施し、学生のプログラミングに対する興味・関心を一層高めている。
土肥教授に、Arduinoを採用した狙いや導入効果などについて取材した。
エクステンションで学ぶハードウェア入門
東京電機大学情報環境学部では、1年次の「コンピュータプログラミングA」の授業において、Java言語の基礎を学習する。年度の授業が終わった1~3月の時期、同学部ではエクステンションという制度を設け、学生は興味あるテーマの講義に自主的に参加する教育プログラムを展開。土肥教授はこのエクステンションにおいてArduinoを活用した「コンピュータプログラミングAを終えた後のハードウェア入門」を平成26年度から毎年実施している。参加者は毎年約20人。単位の認定はないが、学生のモチベーションは高いという。
必要部品が揃った
「Arduino」は、イタリアで開発されたマイクロコンピュータだ。その文法はJavaと似ており、コンピュータプログラミングAで学習した知識が活かせる。
土肥教授はArduinoを採用した理由について、スイッチや光センサーなど、必要な部品がひと通り入ったキット「Arduino Uno」が4000円程度と学生にとって負担にならない価格で販売されていること、参考用ウェブサイトや書籍が多くあることを挙げる。
エクステンション活動は3日間だ。
1日目に学生は各自、自分のノートPCへArduino統合環境をインストールする。その後、2、3日目にかけて、ハードウェアの制御を学ぶ。
扱うハードウェアは毎年変えており、初年度はハードウェアとしてLEDを使い、これを1秒ごとに点滅させるプログラムなどを学習した。今年はサーボモーターを使った講義を行った。
こうしたプログラミング学習は、初歩的な印象を持つかもしれないがそうではないと語る。例えば、暗くなったら自動的に照明がつくようにしたいと思っても、「コンピュータプログラミングA」の授業を受けただけの学生は、そうすることはできない。プログラミング入門教育では、キーボードが標準入力であり、明るさを数値化して入力する方法がないからだ。その点、「Arduino Uno」には光センサーが含まれ、明るさを数値化できるため、LEDのコントロールが可能だ。
同時に、学生はソフトウェアとハードウェアとの関連についても体験的に学ぶことができる。
超音波距離センサー取り入れた講義を予定
来年1月の講義では、Arduinoと超音波距離センサーを扱う |
参加した学生には好評だ。学生の講義に対するモチベーションを「SIEM(シーム)」という独自開発した手法で測定してみると、コンピュータプログラミングAの授業に比べて高いことが分かった。
「Androidアプリの開発をしているが、ハードウェアはこれまであまり触れたことがなかったので楽しかった」「Arduinoのことは知っていたが、さわったことがなかった。いい経験になった」「3日間の講義だったが、新たに学んだことが多かった」などの声が寄せられている。
今後も、引き続き新鮮味のある講義内容にするため、次回(来年1月)の講義では、超音波距離センサーを使う予定だ。
土肥教授は「学生の独創性や創造性を喚起させるための良いきっかけにしていきたい」と抱負を語った。
【2016年8月1日】