早稲田大学は、新入生の入学決定から授業開始までの期間、インターネットを活用して入学前の導入教育を、情報、数学、統計、英語の分野で行っている。情報分野での導入教育に携わる早稲田大学グローバルエデュケーションセンター助教星健太郎氏に取材した。
情報分野の入学前導入教育は2001年度にスタート。対象は各学部への推薦入学者(附属・系属を含む)および人間科学部eスクール(通信教育課程)の希望者だ。授業支援のポータルサービス「Course N@vi(コースナビ)」を用いて4週間程度、オンデマンド形式の講義を行っている。
「早稲田大学では、グローバル社会のリーダーとなって活躍する人材の育成を見据えて教育を行っています。教育の質を向上させるため、入学前に知識やスキルを取得することで、入学後の学習に対する動機付けを図り、大学の授業に必要な基礎的知識の補完を行っています」(星氏)
情報教育部門では、大学生として持つべき情報リテラシーや、学生生活をより有意義に過ごすための情報処理・技術・知識・表現手法を身に付けるのが目標だ。具体的には、平均15分のオンデマンド講義動画を、3~4日に1コマずつ配信。全8回で、受講生は1コマ平均40ページのレジュメを確認しながら、情報リテラシー、早稲田大学の情報環境、ソフトウェア操作などを学ぶ。
また、受講生には「任意課題」と「グループコミュニケーション課題」が与えられる。任意課題は、「担当教員へのビジネスメール送信」「スライド4枚を用いた作品紹介」など、入学後に役立つスキルがテーマとなっている。
グループコミュニケーション課題は、2015年度に導入。思考型クイズを週に1回出題、その後2日ごとにヒントを出していき、受講生はBBS(電子掲示板)内で議論を交わしながら、グループで意見をまとめ解答する。担当教員がBBSを巡回し、解答の内容、取りまとめ方、発言数などの項目で評価、数値化して順位付けを行う。
講義はオンデマンドなので、受講生は期限内であればいつでも視聴できる。期限内に受講できない場合でも、期限後も講義動画が見られるようにしている。任意課題については、締め切り後に提出されたものでもできる限り受け付けるなど、柔軟に対応している。
星氏は「受講生が導入教育で扱う内容に興味を持ち、入学後に情報関連科目を受講するきっかけとなった熱心な学生もいる」と導入教育の効果を語る。
受講生からは「自分では気付けないことも、グループで行動することで得られる内容が多くあった。大学生活を社会的に営むことの大切さについても実感した」などの声が寄せられている。
今後については「高大接続のあり方が抜本的に変わる可能性があり、入学決定の時期も早まる可能性があるため、入学前導入教育はさまざまな形が考えられます」と星氏は話す。
MOOCs(ムークス)などのオンライン教育コンテンツが増えている現状において、より効果的な導入教育を提供するため、検討を続けていく方針だ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2016年4月11日号掲載