東京大学先端科学技術研究センターは、ICTを活用して障害児の学習・生活支援を行う「魔法のプロジェクト」を実施している。
これは同センターがソフトバンクおよび同社のグループ企業で教育事業を行っているエデュアスと共同で行っているものだ。
プロジェクトの目的は、携帯情報端末を実際に特別支援教育の現場で活用してもらうことで、その有効性を検証し、より具体的な活用事例を発表していくことで、障害のある子どもの学習や社会参加機会の増加を図ることだ。
プロジェクトの期間は1年間。2009年度から実施されていて、これまで6つのプロジェクトが実施されている。
09年度は携帯電話の様々な機能を使用し障害児の学習や日常生活を支援する「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」を実施し、成果として「障害のある子どもたちのための携帯電話を利用した学習支援マニュアル」を作成した。
11年度はiPadを活用した障害児学習支援「魔法のふでばこプロジェクト」、12年度は支援の場を学習だけではなく生活にまで広げた「魔法のじゅうたんプロジェクト」をそれぞれ実施。
13年度は前年度までの3つのプロジェクトの集大成として「魔法のランププロジェクト」が行われた。
また、14年度は特別支援学校、特別支援学級の障害児に加え、初めて通常学級の発達障害児も対象にした「魔法のプロジェクト2014~魔法のワンド~」、15年度は個々の児童・生徒の特性に合わせた支援を強化した「魔法のプロジェクト2015~魔法の宿題~」をそれぞれ実施している。
毎年行われる成果発表会では、適切にICTを活用した学習支援を受けることで、障害のある児童生徒が、大きく伸びた事例が数多く報告され、全国から集まる教育関係者や保護者が熱心に耳を傾けている。
今年4月から開始予定の16年度「魔法のプロジェクト2016~魔法の種~」は、09年度から実施してきた一連のプロジェクトの成果を活かし、新たなニーズに対する実践研究を行うとともに、さらに同活動を普及させていくことを目的としている。
また、16年度のプロジェクトでは、ICTを活用して障害児の学習・生活支援を効果的に実践できる教員の早期育成を目的に、教職課程を履修中の学生や、その指導者を対象としたセミナーも開催する予定だ。
「魔法の種」という名称には、これまでの「魔法のプロジェクト」で培ってきた知見やノウハウを、教員志望の若手人材と共有することで、「先生の種」を育てていくという思いも込められている。
さらに、個々の児童・生徒のニーズに合わせて、より質の高い支援が実践できる先生を「魔法のティーチャー」と名づけ、魔法のプロジェクトにおいて認定をしている。
14年度のプロジェクトにおいて、初めて2人の先生が認定された。また15年度は新たに3人の先生が認定されている。
16年度のプロジェクトの採択者80組は、3月中旬までに決定する予定。参加校には今年4月1日から来年3月31日まで携帯情報機器が貸与され、さまざまな実践研究が行われる予定になっている。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2016年3月7日号掲載