東京藝術大学アフガニスタン特別展実行委員会は、バーミヤン大仏壁画復元のため、クラウドファンディングサービス「READYFOR(レディーフォー)」を活用した資金調達プロジェクトを昨年11月30日から今年1月29日まで実施した。
クラウドファンディングとは「群衆(Crowd)」と「資金調達(Funding)」とを組み合わせた造語。インターネットを通じて、不特定多数の人から資金を集める仕組みを指す。
今回のプロジェクトで活用されたREADYFORは、11年のサービス開始以来4年間で、15万人の支援者から19億円以上を集める、日本最大規模のクラウドファンディングサービスだ。
今回の資金調達プロジェクトは、復元費用の一部400万円の調達を目指して行われた。
今回の資金調達にクラウドファウンディングを活用した理由について、東京藝術大学客員教授 井上隆史氏は次のように話す。
「文明の十字路に位置したアフガニスタンの文化財の重要性や素晴らしさを、できるだけ多くの人々に伝えたいという思いから、復元作品が展示される展覧会は、無料公開を考えている。クラウドファンディングの活用により、多くの人にこのプロジェクトを知ってもらう機会になると同時に、心ある方々から支援してもらうことで”一緒になって作っていく”という一体感を共有できるのではないかと考えた」
支援は一口3000円からで、支援者は、復元された天井壁画が出品される展覧会「素心 バーミヤン大仏天井壁画~流出文化財とともに~」や、特別コンサートなどに招待される。
復元されるのは、アフガニスタンの戦乱で01年に破壊されたバーミヤン東大仏の天井壁画「太陽神と飛天」。東京藝大が独自に開発した技術を駆使して、原寸大の3次元立体で復元する。
大仏壁画の復元作業は、京都大学が70年代の現地調査で撮影した約1万5000枚のブローニー版写真から選んだ150枚の写真などをデジタル化して進められていった。しかし、岩絵具(いわえのぐ)などの質感を表現するのは、デジタルの高精細化が進んだ現在でも困難だった。
東京藝大は岩絵具などの質感を表現できる模写・レプリカの制作方法を独自開発して特許を取得していた。今回はその特許技術を用いて、バーミヤン東大仏の天井を色鮮やかに飾っていた壁画窟全体を、原寸大の3次元立体として復元することとした。
井上氏は復元作業の意義についてこう語る。
「バーミヤンの大仏や壁画が爆破で失われたことは誠に残念なことですが、私たちはその破壊行為を糾弾するという姿勢ではなく、その文化遺産を今われわれが持つ最新技術で復元してみせることで、失われた遺産のかけがえのなさを認識してもらいたいと思っている。そして二度とこうしたことが行われないようにとの願いを込めたメッセージとしたいと思っている」
復元された「太陽神と飛天」は、今年4月12日から6月19日まで、東京藝術大学 大学美術館陳列館のアフガニスタン特別展「素心 バーミヤン大仏天井壁画~流出文化財とともに~」で展示される。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2016年2月1日号掲載