立正大学は1580年に日蓮宗の教育機関として創立された「飯高檀林」を淵源とし、現在は東京・品川と埼玉・熊谷の両キャンパスに8学部15学科、大学院7研究科を擁する、学生数1万人の総合大学である。
2000年代初頭からICTの活用に積極的に取り組み、現在は全学規模のクラウド基盤を構築している。同大学におけるクラウド活用状況について取材した。
立正大学は2002年度から学外のICT関連サービスおよび学内サーバーの仮想化をスタートさせている。積極的にサーバーの仮想化に取り組み、13年度には事務で利用されるクライアントの仮想化、および関連サーバーのクラウド基盤への移行を行った。
翌14年度には、データセンターまで学内ネットワークとする構成に変更。
教育研究システムにおけるクライアントの全面仮想化、および関連サーバーのクラウド基盤への移行を完了した。これにより、ほとんどのサーバーがクラウドへ移行し、学内のほぼすべての端末が仮想化されることとなった。
クラウドを活用する以前、立正大学の学内システムは、教育研究システムと事務システムが、それぞれ印刷環境やファイルサーバーなどの類似のシステムを構築し、コストが二重にかかるのが問題であった。
また、それぞれのシステムで異なるアカウント(IDとパスワード)が使われていたため、利便性が良くなかった。
そこで、約10年かけて教育研究システムAD(Active Directory)と事務システムADに集約し、認証基盤を整備することで、コストの削減と利便性の向上を実現させた。
さらに14年度末にID管理システムを導入し、教育研究システムAD、事務システムAD、マイクロソフトのOffice365用AD、汎用LDAP(Lightweight Directory Access Proto‐col)を統合して管理できるようにした。
今年度は、Office365を活用し、卒業後も継続して利用できる「生涯メール」の導入を行った。
これにより、卒業生と在校生との絆を深めることに役立つものと期待されている。
ただし、現在使っている汎用ドメイン「ac.jp」の契約が16年度まで続くため、当面は汎用ドメインとの平行運用となる。契約満了後の17年度からは、生涯メールアドレスのみを学生に付与することになっている。
「Office365はオンラインストレージやスケジュール管理など多彩な機能を持つグループウェアで、授業でも効果的に活用できると思う。
各種API(Application Programming Interface)も整備されつつあるので、これからは積極的に活用していきたいと考えている」(立正大学情報メディアセンター品川情報システム課課長菅野智文氏)
CPUやメモリーなどを統合的に監視し通知するシステムが稼働していることにより、大学側で情報システムを運用する負担が軽減し、耐障害性も格段に向上したという。
今後は、学内の情報システムの集約をさらに進め、コストと利便性を向上させていく考えだ。菅野氏は「ストレージや各種サーバーのデータが統合されることで、ビッグデータの活用も可能になるだろう」と話す。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2015年12月7日号掲載