情報メディア学科では日本で初めて全学生にiPadを無償配布した。4年が過ぎ、全学年が所有するようになり、学年横断的な活用が進んでいる。将来的にはBYODを視野にいれている
名古屋文理大学は、愛知県稲沢市と名古屋市にキャンパスを持ち、大学2学部3学科、短期大学1学科2専攻、全学で約1400人の学生が学ぶ。1986年、短大に情報処理学科が開設。99年には大学に情報文化学部が開設された。
短大時代から数えておよそ30年にわたって情報教育が行われ、卒業生は情報技術者をはじめ、情報技術を持った企業人、情報教育に関わる人材として活躍している。
同大学では、11年に情報メディア学科の新入生全員へのiPad無償配布を開始。学科の新入生全員への無償配布は、日本の大学では初だ。
同学科でのiPad無償配布の目的は、授業の活性化、学生生活での活用、モバイルシステム開発の推奨の3点にある。
まず「授業の活性化」では、資料配信、レポート提出、eポートフォリオ、eラーニング、教育アプリ、プレゼンテーションなど多様な利用がなされ、双方向授業、反転授業、アクティブラーニングの推進にもつながっている。
2点目の「学生生活での活用」においては、学生間や教員らとのコミュニケーション、隙間学習、eラーニングによる資格取得対策、就職活動などでの活用が見られる。
時間割の確認や休講通知、履修登録、成績管理、出席管理なども、学生ポータルサイトを通じてiPadから行える。
3点目の「モバイルシステム開発の推奨」については、モバイル端末の利用やアプリ開発への関心が高まり、学年をまたいだ学生の自習的な勉強会によるアプリ開発が行われるようになった。
学内外のアプリ開発コンテストへ応募したり、研究成果を学会で発表する学生も見られる。企業とコラボレートした開発も行われており、在学中からIT企業とつながりをもつ学生も出てきた。
名古屋文理大学情報メディア学部学部長の長谷川聡教授は「配布を始めて4年が過ぎ、全学年がiPadを持つようになったことで、学年横断の授業や学生プロジェクトでの活用が進みました。卒業研究や就職活動の際も利用されるようになり、4年間を通して利用可能であったことが実証されました」と話す。
オープンキャンパスでは、学生が高校生に向けてiPad利用のデモを行ったり、高校生向けのアプリ開発講座を実施している。
iPad無償配布前から、有志教員により行われている「iPad教育利用研究会」では、年々新しい利用法が提案・検討され、他大学や学会において情報交換する機会が増えた。
iPad活用の教育は、日本高等教育評価機構からも「名古屋文理大学平成26年度大学機関別認証評価評価報告書」により、高い評価を受けた。
「利用については毎年、最新機種を含めて検討を重ねています。利用方法もeポートフォリオやプログラミング教育など、新しい取組を進めているところです。『iPadありき』ではなく、他の端末やシステムの利用も含めて常に検討しています。将来的には、利用可能なタブレット端末が十分に普及すればBYOD(Bring Your Own Device)も考えられるでしょうし、ウェアラブル端末の利用もあり得るかもしれません」(長谷川氏)
近い将来、これまでのiPad利用による成果の蓄積をオンライン上で提携高校などと共有できるようにし、遠隔授業や協働学習などへ展開することを検討している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2015年7月6日号掲載