九州大学は、2011年に、附属図書館の付設として「教材開発センター」を設置。同センターでは、講義ビデオの撮影・編集・公開、MOOC(Massive Open Online Course)コンテンツの制作、デジタル副教材の開発、各種講習会の実施などを行っている。
今回は、同センターが取り組む講義ビデオの撮影・編集・公開と、3次元CGを使った電子教材について紹介する。
講義ビデオの撮影にあたっては、まず学期が始まる1か月前までをめどに、担当教員からビデオ撮影の要望を受け付ける。その後、公開承諾書を提出してもらうとともに、著作権処理などについて確認する。
撮影は講義室にビデオ機材を持ち込み、同センターのテクニカルスタッフや教員が行い、必要に応じて、学生に撮影を依頼することもある。
撮影後はすぐに編集し、講義担当の教員がビデオ内容を確認。その後、OCW(Open Course Ware)、iTunes U、YouTubeにおいて講義ビデオを公開する。講義ビデオは学生に限らず、一般の人たちも閲覧できる。
「学生にとっては、いつでもどこでも、自律的に自分のペースで自由に学習できることで、自ら問題意識を持ち、自ら考え解決していくアクティブラーナーとしての成長につながると考えています。一方、教員にとっては、反転授業や融合型学習の実践に役立っています」(九州大学附属図書館付設教材開発センター長・岡田義広氏)
今後は、専用スタジオを使って、高品質な撮影・編集を行い、同大学を代表する研究者の講義をMOOCコンテンツとして公開していく計画だという。
同センターでは2012年度より、3次元CGを活用した電子教材の開発に本格的に取り組んでいる。初年度は、医学部の学生と教員との協働により、骨学を学ぶ副教材を開発した。対話的なマウス操作で、骨や部位の名称を、形状を確認しながら学習できるのが特徴だ。
翌13年度には、細菌学を学ぶための副教材「サイキン・ハザード」を開発。RPG(ロールプレイングゲーム)のように物語性を持たせたのが特色だ。ゲームを楽しむ感覚で、細菌について学べる。
14年度には、解剖学を学ぶための副教材「アナトミー・アドベンチャー」を開発。これもゲーム性を取り入れたもので、スゴロクのようにコマを進めていき、各マスに止まったとき、解剖学に関するクイズが出題され、それに正解しないと得点が得られないというものだ。ゴールを目指してクイズに答えていく過程で、解剖学の知識が身に付く。
「講義担当の教員と受講学生との協働で進めていますので、学生の意見を反映させた、より学習効果の高い教材が開発されています」(岡田氏)
同センターによれば、大学などの高等教育機関で、3次元CGを活用した電子教材の開発に取り組んでいるケースはほとんどないという。電子教材開発のモデルケースとなるよう、これからもさらに取り組みに力を入れていく考えだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2015年6月1日号掲載