名古屋大学はeラーニングシステム「NUCT」(Nagoya University Collaboration and course Tools)を平成22年から運用している。
同大学では平成10年に情報メディア教育センターを設置し、教材作成を支援するため、コース管理システム「WebCT」の日本語化や利活用法に関する研究開発を行ってきた。その後、WebCTは情報メディア教育システムの一部として導入されたが、WebCTのライセンス供与終了が予告され、後継システムの検討に入った。
検討では、将来にわたるライセンス費用、開発言語、OS、認証システム、データベースシステムの共通化など様々な観点から議論を重ねた。
そうして開発されたのがNUCTだ。これは、海外の大学などが推進する教育ソフトウェア開発プロジェクト「Sakai」のプログラムをベースにしている。
教員はNUCT上に授業空間(これを「講義サイト」と呼んでいる)を開設し、授業で使う教材や資料をアップロードしたり、テストを作成する。
一方、受講登録された学生は、パソコンなどから講義サイトにログインし、教材を閲覧したり、テストを受けたりすることができる。
大学側ではシステムのバージョンアップを随時行い、利用の便宜を高めるとともに、様々な利活用法を提案してきている。
こうした大学側の取組もあり、NUCTの運用開始以来、講義サイト数は順調に増え、学生の利用も増加しているという。
大学側が教員を対象に、これまでの利用状況について調査したところ、課題提出管理と成績管理が多いことが分かった。
これは、NUCTのログインIDや学籍番号が表示されることで、学生の学習状態を把握しやすいことが理由だと考えられている。ほかにも、メッセージ通知機能や教材提示機能の利用が増加している。
タブレット端末向けの表示機能については、「PCが設置されている端末室以外でも利用できるのがいい」「授業でipadを利用しているので便利」「採点操作が楽」などと評価する声が多い。
また「スマホを活用して、即応性の高いアンケートなどを行いたい」といった利用法を考えている教員もいた。
現在は、ほぼすべての講義室に無線LAN環境が構築されているが、無線LAN同時アクセス数の制限からNUCTを十分に利用できない場合もあるため、アクセスポイントを拡充させ、利便性を向上させていくことも検討している。
一般的に、eラーニングは、導入することよりも、成果を上げながら続けることの方が難しいと言われている。
また、eラーニングを利用したからと言って、学生が突然、勤勉になるという訳でもない。
名古屋大学では、これらの課題の解決を念頭に、今後もNUCTの運用を行っていく考えだ。
今年4月からは、すべての教養教育院(教養課程に相当)開講の全学教育科目および学部開講の科目について、NUCTにサイトを作成し、学生の受講者登録を行っている。
今後は、従来から行われている紙によるレポート提出とNUCTとの連携なども視野に入れたシステムのバージョンアップを計画している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2015年5月4日号掲載