武蔵野美術大学美術館・図書館は、1967年に美術館機能と図書館機能をあわせ持つ「美術資料図書館」として開館した。
その後「書物の森」というコンセプトで設計された図書館が2010年にオープンし、現在に至っている。
館内の蔵書数は美術・デザイン関係を中心に、関連領域や一般書など約28万冊で、開架スペースには10万冊の専門図書が並ぶ。
現在の図書館の建設にあたっては、竣工するまでの過程で学生たちから「こんな図書館があったらいいのに」というアイデアを出してもらい、実際の設備などに反映させていった。
「特に力を入れたのは、アナログのライブラリーを集積するにあたって、IT機能を付加したことと、ミュージアム機能との融合を図ったことです。
これは武蔵野美術大学ならでは取り組みだと思います。
また、貴重書や美術品のデジタルアーカイブも構築し、学習や研究の支援に不可欠な利便性の向上も目指しました」(同館図書資料担当 古賀祐馬氏)
具体的にどのようなIT設備を整えたのかを、紹介しよう。
まず、エントランスを入った正面に、2台のデジタルのインフォメーションボードを設置した。このボードには、学内や館内のイベント、美術館・図書館のコレクション、首都圏近郊の展覧会情報などが常時映し出されている。
また「ブックタッチ」と呼ばれるIT機器も導入した。
資料をかざすとその資料に関する情報だけではなく、図書館所蔵の関連資料(おすすめの本、同著者の本、同分野の本)や展覧会の情報も表示されるものだ。
ブックタッチを使用することで、従来は関連資料を探す際OPAC(蔵書検索システム)で何度も検索しなければならなかったものが、関連資料のリンクをたどるだけで見つけ出せるようになった。
あわせて、どの学科の学生が何回利用したかも表示されるため、学科間の情報交換にも活用されているという。
学生が学習するスペースのIT環境も整備した。
「情報加工スペース」には、PCとスキャナーを置き、画像の取り込みや加工処理ができるようにした。
「WEBスペース」では、インターネット閲覧用端末によって、自由にネットを見ることができる。
また「卒業制作・修了制作 優秀賞受賞作品デジタル・アーカイブ」も構築。過去50年間(1962年~2012年)の優秀賞受賞作品がタッチ操作で閲覧できる。
冊子体では見つけるのに時間がかかった先輩たちの作品も、このアーカイブによって簡単な操作で探せるようになった。
こうしたIT設備は学生からも好評で、中でも「ブックタッチ」「情報加工スペース」「卒業制作・修了制作 優秀賞受賞作品デジタル・アーカイブ」は特に利用率が高いという。
今後も学生や研究者に有益なサービスが提供できるよう、IT環境の整備には力を入れていく考えだ。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2014年12月8日号掲載