東京大学は、大規模公開オンライン講座(MOOC=Massive Open Online Course 通称ムーク)への取り組みに力を入れている。
MOOCとは、ネット上で無料公開されているオンライン授業のことだ。これまでもオープンコースウェア(OCW)と呼ばれる講義コンテンツの無料公開サービスはあった。MOOCがOCWと異なるのは、掲示板やSNSを活用した講師と受講者間とのやり取りや、履修認定などが行われる点にある。
東京大学は日本で初めてのMOOCの試みとして、2013年9月、米国・コーセラ社が提供するMOOCプラットフォームにおいて実証実験を開始した。
開設した講座は、村山斉氏(カブリ数物連携宇宙研究機構機構長・特任教授)による「ビッグバンからダークエネルギーまで」と、藤原帰一氏(大学院法学政治学研究科教授)による「戦争と平和の条件」の2講座。
英語で配信し、2講座あわせて世界150か国以上から8万人以上が登録、約5400人が修了した。
講座は4週間のコースで、受講者は1本約10分の講義ビデオを毎週10本閲覧し、課題に回答する。講義ビデオはスライドの前で講師が解説を加えるスタイルが基本で、必要に応じてCGアニメーションや動画などを加えて構成した。
2014年度は新たに「インタラクティブ・コンピュータグラフィクス」と「ゲーム理論」をテーマにした講座を開設する。
東京大学では、MOOCの取り組みをさらに発展させるため、今年に入って、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の出資によるMOOCプラットフォーム「エデックス」と配信協定を締結した。
エデックスは2012年5月にサービスを開始。米国を中心に世界トップクラスの31大学が参加し、140以上の講座を公開。登録者数は約200万人以上にのぼっている。
東大ではエデックスにおいて今年秋から、ハーバード大学およびMITと協力し、近現代の日本に関する連携講座シリーズ「ビジュアライジング・ジャパン」を提供する。
同シリーズでは、ハーバード大学のアンドルー・ゴードン教授、MITのジョン・ダワー教授が講座を担当。東大からは副学長・大学院情報学環吉見俊哉教授が「ビジュアライジング・ポストウォー・トーキョーPart1/2」の2講座を担当し配信する予定だ。
今回の連携にあたり、東大の江川雅子理事は「ハーバード、MITとの連携によって魅力ある教育プログラムを開発することで、東京大学の国際化がさらに進むことを確信しています」とコメントしている。
また、オープンエデュケーションの第一人者であるMITの宮川繁教授(東京大学総合教育研究センター特認教授・オンライン教育統括ディレクターと兼任)は「今回のビジュアライジング・ジャパンは、世界初の3大学共同のMOOCであり、グローバルなコラボレーションの新しいモデルとして注目されています」と述べている。
東大では今後、MOOCでの取り組みを活かし、学内キャンパスの授業におけるオンラインコースの活用を検討していく。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2014年6月2日号掲載