12月6日、東京・KFCホールで第45回教育委員会対象セミナーを開催した。6人の講師によって行われた講演の内容を紹介する。次回の第46回教育委員会対象セミナーは、2月2日に福岡・パピヨン24ガスホールで開催する。
古河市教育委員会指導課・森田泰司課長 |
茨城県古河市教育委員会の森田氏は、ICTを活用したプログラミング教育について報告した。
古河市ではICT推進事業に取り組んでおり、学習用端末(iPad)約1500台導入や大型テレビの各教室配備等を行った。このほか、古河市教育活動指導員、特別支援教育支援員、理科教育支援員等、教員のサポートをする人員約150名の配置、英語教育推進授業として小学校・中学校にALT20名の配置、古河塾推進事業として学習用端末を活用した放課後学習支援も実施している。
ICTを活用する目的は、従来の教員中心の一斉授業から脱却し、主体的協働的学習に変えること。主な効果として、子供たちの学習意欲の向上、主体的な学習と表現力の向上、発表して自信がつくことによる自己肯定感の高揚、デジタル教科書の活用などで教員の教材を作る手間が省けたり、子供たちが一斉に答えを送信して比較検討したりすることによる学習の効率化、それにより授業でまとめの時間を多く取ることによる基礎・基本の定着などで成果があった。
プログラミング教育は、児童生徒が学び合いながら論理的に考えていく力を身につけることと捉えている。プログラミングの習得が目的ではなくプログラミング的思考を身につけさせること、教員の負担を増やさないこと、低学年ではICT機器を使わずどの教科にも取り入れられる「アンプラグドプログラミング」を行うことを課題として、モデル校の大和田小学校で取り組んでいる。
アンプラグドプログラミングは子供たちの思考の幅が広がり、深まるとともに、見通しを持って行動できるようになる点で良い。
小学校6年生の算数「拡大図と縮図」の授業では、「魔方陣をえがこう」という課題を出し、ボール型ロボット「Sphero」をプログラミング。道のり、速さ、時間を計算したり、示された大きさの魔方陣を作図したりした。
小学校3年生の算数「いろいろな三角形」の授業では、「二等辺三角形のかき方を説明しよう」という課題を設定。導入で、歯みがきなど日常生活は様々な手順の組み合わせで成り立っていることを説明。その後児童は二等辺三角形の書き方の手順を紙に書く。これがプログラミング的思考のシーケンス(考えの手順)につながる。1度の授業で「作図することができたか」という教科のねらいと、「手順通りに説明できたか」というプログラミング的思考の狙いが出てくるが、プログラミング的思考についてはあくまでも視点として授業に取り入れる。最後には身近な生活とPCとのつながりを考え、PCの働きを自分の生活に生かそうとする態度が身に付くようにしたい。
こうした授業を様々な学年、教科で系統的に実践し、アンプラグドプログラミング、プログラミング操作、それらを生活と関連付けることをらせん状に教育していくことで、児童生徒の納得感のある理解につなげていくことが重要である。プログラミングを学ぶのではなく、プログラミングで学ぶという姿勢が不可欠と考えている。
【講師】古河市教育委員会指導課・森田泰司課長
【第45回教育委員会対象セミナー・東京:2017年12月6日】