次期学習指導要領では、データサイエンティストの育成に資する学習内容として、「統計教育」の充実も求められている。統計検定を実施している(一財)統計質保証推進協会の企画委員・事業委員を務める中西寛子名誉教授(成蹊大)と事業委員の森裕一教授(岡山理科大)に、日本の統計教育について聞いた。
今年のセンター試験でも箱ひげ図が出題された。箱ひげ図とはデータのばらつきをわかりやすく表現するための統計グラフだ。既に外国では小学6年で箱ひげ図を習い、最小値、中央値、最大値などを理解している。この差を埋め、さらにリードすることがこれからの日本に求められている。
統計学とはデータ分析の文法だ。データ解釈・問題提起・問題解決が重要なミッションであり、計算だけをするわけではない。
看護師のナイチンゲールは統計学者でもあった。傷病兵が病院で亡くなる原因の多くが衛生状態の悪さであることを、データを収集して証明。グラフを多用して問題点を可視化した。ここから英国の統計学が発展したと言われている。日本では統計学を「数学」で学んでいるが、外国では通常、専門学部として数学とは別のカリキュラムが設置されている。
情報化の進展で、データサイエンティストが世界的に求められており、その育成が課題だ。中国、韓国でもそのために統計教育に注力している。
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3級の箱ひげ図の問題。正解は③ |
日本でも深刻な人材不足であり、文科省、経産省、総務省も動き出している。
学習指導要領の改訂に向けた2016年12月の中央教育審議会答申〔数学科〕には「統計に関する学習を充実させていくことが重要である」と記述されている。
次期学習指導要領では、現在高校で学ぶ四分位範囲や箱ひげ図が中学に移るなど、すべての生徒が統計を学ぶ機会が増え、諸外国のレベルに近づくことになる。
統計質保証推進協会では「統計検定」を実施している。3級はセンター試験と同等で、高校生レベルプラスアルファの難易度。4級は中学生レベルで、グラフを読むことが主だ。
AI、機械学習、IoTなどが話題になっている今、データを正しく扱い、予測と分類などの手法を理解しておくことが求められている。統計教育を日本に根付かせるためにも活用してほしい。
次回の検定は6月18日に実施される。申込方法などは後日、統計検定のHPで公表される。▼www.toukei-kentei.jp