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教育ICT

現場の実情に合ったセキュリティ対策を 豊島区税務課・髙橋邦夫課長

2018年1月1日
第45回教育委員会対象セミナー・東京

12月6日、東京・KFCホールで第45回教育委員会対象セミナーを開催した。6人の講師によって行われた講演の内容を紹介する。次回の第46回教育委員会対象セミナーは、2月2日に福岡・パピヨン24ガスホールで開催する。

首長部局と連携してセキュリティポリシーを

豊島区税務課・髙橋邦夫課長
豊島区税務課・髙橋邦夫課長

豊島区の前CISOで、文部科学省教育情報セキュリティ対策推進チーム副主査を務める高橋氏は、教育情報セキュリティの現状と、同区の校務系ネットワークと行政系ネットワークの統合事例について話した。

文部科学省が策定した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(以下、ガイドライン)は、校務系だけではなく、学習系ネットワーク上における児童生徒の活用を意識して作られている。そのきっかけが、教育ICTに関して先進的な取組を行っている佐賀県の県立高校で起きた情報漏えい事件だ。

これを受け文科省は「教育情報セキュリティのための緊急提言」を公表。さらに教育情報セキュリティ対策推進チームを立ち上げ、「ガイドライン」を作った。各教委はこれを基に、セキュリティポリシー策定をすることになる。

ポリシー策定時に留意すべきは、策定したものを最終形と思い込まないことだ。様々な実証研究の成果を取り込みながら、ガイドラインは変わっていく。各自治体のセキュリティポリシーもPDCAを行いながら少しずつレベルを高めていくことが重要だ。

現在の学校のネットワーク環境には、学校管理職や事務職員が使う行政系、主に教員が使う校務系、教員と児童生徒が使う学習系の3つがある。学習系では、全国の半数近くが学校から直接インターネットに接続する仕組みになっており、フィルタリングは各学校任せで教育委員会の考えが反映されにくい状態。学校独自で校務支援システムを利用している学校が3割超ある。情報共有や教員の負担軽減につながっていない。

学習系と行政系の最も大きな違いは、行政系は情報を漏らさない点に主眼を置いていること。対して学習系ではICTを活用して積極的に情報にアクセスして使わせることで児童生徒が社会に出て生きていく力を身につけることとしている。双方のセキュリティポリシーが全く同じにはならない。

セキュリティポリシーの内容を教員に理解してもらうことも重要だ。情報教育の研修の中で、セキュリティについて触れるだけでも意識が変わる。平成27年度にICT活用指導力に関する研修を受講した教員は4割弱にとどまった。学校教育の中でのICTの位置づけがまだ低いように思う。

豊島区は校務系ネットワークと行政系ネットワークを統合した。きっかけは、教育ICT予算要求に対する財政部門の不信感。教育委員会にはすべての学校に一斉に校務支援システムを導入したいとの考えがあって予算額が膨らんでしまい、財政部門に却下されてしまう。一方で区長はその必要性を理解しているが、予算を抑えたい。そこで下命が下り、統合を実施した。

具体的には、庁内LANの下に校務系ネットワークを置き、互いの一部のデータのやり取りができるようにした。両者の統合によりサーバなどの機器の購入コストを抑えることができた。指導主事は庁内LANから現場の校務支援システムを見られるので、現場の状況がよくわかり、ペーパーレス化にもつながった。合わせて指導要録(原本)も電子化。全国で2例目、首長部局との連携では初の取組となった。

「ガイドライン」で想定した一番の脅威はインターネット。重要情報はインターネットとは分離した環境で扱うようにすることがポイント。同時になぜこのガイドラインができたのかを十分理解し、教育現場でICTを有効活用することを前提に、現場の実情を見ながら、セキュリティポリシーを作ることが大切だ。首長部局は経験から様々な知見を持っている。ともに検討することが重要になる。

【講師】豊島区税務課・髙橋邦夫課長

 

【第45回教育委員会対象セミナー・東京:2017年12月6日

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