2月25日に第2回私立公立高等学校IT活用セミナーを、大阪・CIVI研修センター新大阪東で開催した。大阪での高等学校ICT活用セミナーの開催は初であったが、当日は72名の参加者があった。次回私立公立高等学校IT活用セミナーは7月28日に東京・KFCホールで開催する。
金蘭千里中学高等学校 渡辺徹教諭 |
高校入試がない完全中高一貫校である金蘭千里中学高等学校には、定期考査はなく、全教科で「毎朝テスト」を実施。定期考査の時期には実力テストを行っており、採点・成績処理の期間がないという特徴がある。「高2担任、国語科教諭で吹奏楽部顧問、小論文面接補習担当、文化部校外学習主任と校務が多く、校務支援システムについてかけられる時間はごく限られる。しかもITにはそれほど詳しくない」と語る渡辺徹教諭は、校務支援システムの導入と活用、選定のポイントについて報告した。
新校舎開校当初より、ネットワークを活用していた同校では、当初はエクセルやワードなどで校務処理をしていた。平成24年に全教職員に校務用PC配備後は、グループウェアや教務システム、インターネット出願、保護者へのメール配信システムなどを導入。
年度からは新たに保護者への成績配信システムも導入する。
情報収集は、教育ITに関する展示会や他校、Webなどで複数社の複数製品を比較。選定のポイントは以下のとおり。▼目的に合致したシステムか▼必要な機能を備えているか▼必要なサポートがあるか▼適正なコストか▼校内の体制と合致するか▼データのやりとりが可能か
システム導入の目的は、一貫したデータ管理の実現だ。中学入試はWEB出願、その際に入力した情報は入学後、出欠や成績データと合わせて、教科指導や大学進学の際の調査書や指導要録作成などに活用。無駄なくミスの起こりにくい仕組みを実現した。
教員同士のやりとりには、グループウェアを活用。連絡事項は掲示板活用を徹底した。教学システムの活用方法についても掲示板で情報共有。メール連絡やファイルの送付ができ、資料のデジタル化が進み、職員会議の時間は2週に1回20分程度に削減できた。確保した時間は教材研究や授業準備などに活用している。
公式Webに加えてリアルタイム発信ができるブログシステムを導入。これにより受験検討者に対してアピール。まずは学校に足を運んでもらえるよう、検索上位に位置しやすいSNSでも発信している。
これまでの取組を振り返って「校務支援システムの活用目的と戦略をどこまで現場に説明するかが導入のポイント。1度導入してから別のシステムに変更するのは難しいため、導入前の計画立ては非常に重要」と語り、次のような点を重視すべきであると述べた。
導入後、学校側だけで活用していけるようなサポート体制が整ったクラウド型のシステムであること。トラブルが発生した際は、直接訪問による対応のほか、遠隔操作でもトラブルが解決できるリモートサポートサービスがあること。必要な機能が標準装備されていることなどだ。
運営にあたっては、管理職などが率先してリーダーシップを取ることは必要だが、活用を進めるうえで重要なのは、個人ではなく複数人で運営管理できる体制を整えていくことが重要と述べる。「1人の教員に任せきりでは活用に支障が出ることもある。少しでも多くの教員がシステムについて理解して、安定した運営を維持できる環境を作っていきたい」と語った。
【講師】金蘭千里中学高等学校・渡辺徹教諭
【第2回私立公立高等学校IT活用セミナー・大阪:2017年2月25日】