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教育ICT

教育の質の向上には早期環境整備が必要 文部科学省情報教育課・梅村研課長

2018年1月1日
第45回教育委員会対象セミナー・東京

12月6日、東京・KFCホールで第45回教育委員会対象セミナーを開催した。6人の講師によって行われた講演の内容を紹介する。次回の第46回教育委員会対象セミナーは、2月2日に福岡・パピヨン24ガスホールで開催する。

情報活用能力を教科横断的に育成

文部科学省情報教育課・梅村研課長
文部科学省情報教育課・梅村研課長

梅村課長は「教育の情報化の現状と今後の展望」について講演を行った。

教育の情報化には、児童生徒の情報活用能力の育成のための情報教育の充実、教科指導におけるICT活用、校務の情報化の推進の3つの側面があり、これらの取組を通じて教育の質の向上につなげていくことが大きな政策目的である。そのために、教員の情報教育・ICT活用指導力の向上、学校のICT環境整備、教育情報セキュリティの確保の3つの教育の情報化を支える基盤が必要となる。

文部科学省においては、中央教育審議会の平成28年12月の答申を受けて、平成29年3月に小学校と中学校の新学習指導要領を告示した。小学校は2020年度から、中学校は2021年度から全面実施となる。情報教育・ICT活用関連では、情報活用能力を「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けたこと、学校のICT環境整備の必要性が初めて記載されたこと、小学校でのプログラミング教育を必修化することの3つがポイントとなる。高等学校の新学習指導要領については平成29年度中に告示する予定である。

学校のICT環境整備については、第2期教育振興基本計画で目標とされている水準の達成のために平成26年度から平成29年度にかけて単年度1,678億円の地方財政措置が講じられている。しかしながら、例えば児童生徒数に対する教育用コンピュータの整備状況は、目標の3・6人/台に対し平成28年3月現在の平均は6・2人/台となっている。また、超高速インターネット接続率や普通教室の無線LAN整備率等も目標には届いておらず、目標に向け更に整備を進める必要がある。文部科学省の調査では約7割の自治体がICT環境整備計画を策定する予定がないとしているが、早期に段階的・計画的なICT環境整備に取り組んでいただきたい。

文部科学省の「『学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議』最終まとめ」(平成29年8月)では、学習者用端末について、「授業展開に応じて必要な時に1人1台の使用環境を可能にする(当面は1日1授業分程度を目安)」ため「3クラスに1クラス分程度」を整備すること、電子黒板については、名称を「大型提示装置」とし、「大きく映す」という提示機能を必須とした上で、実際の学習活動を想定し、配備を進めることが適当とされている。他にも大型提示装置等の特別教室への整備、充電保管庫や統合型校務支援システム、情報セキュリティの確保などの必要性が新たに指摘されている。

先ほど触れたとおり、新学習指導要領においては、情報活用能力を教科横断的に育成するために、カリキュラム・マネジメントにより学校全体で取り組むことが求められている。文部科学省では平成28年度から情報教育推進校(IE-School)の取組を通じて、情報活用能力育成のための年間指導計画の作成や、指導方法等に関する実践的な研究を行っている。平成30年度も継続的に実施予定であり、各学校での指導に役立つように、成果を普及していくこととしている。

プログラミング教育については、新小学校学習指導要領において、「児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」を計画的に実施することが明記された。中学校では従来の内容を拡充し、また、高等学校では「情報Ⅰ」を新設し、その中でプログラミングに関する学習内容が充実される見込みである。小学校では各教科の中で、教科の学びと合わせて論理的思考力を身に付けられるよう進めていくことになっており、各教科の目標・内容を踏まえた準備が必須となる。

文部科学省は平成29年度中に「小学校プログラミング教育指針」(仮称)を策定する予定であり、平成30年度には、指導事例の創出、各地域のリーダーとなる教員等に対するセミナー、教員用研修教材の作成などを実施する「小学校プログラミング教育支援推進事業」に取り組むこととしている。

また、学校がプログラミング教育に取り組みやすくするためには、授業で活用できる教材の開発を促進することや、指導に当たって外部人材を活用する仕組みを構築することも重要であり、それらについては多くの賛同企業や団体が力を結集する「未来の学びコンソーシアム」と連携しながら検討を進めている。

校務の情報化も課題の一つだ。学校において校務の情報化を推進することは教員の業務の効率化に有効であると考えられるが、統合型校務支援システムを導入している学校は平成28年3月現在で43・1%にとどまる。小規模自治体の調達コストなどの負担や教員の都道府県内での異動の実態などを踏まえると、都道府県単位での共同調達・運用が有効であると考えられる。平成29年度は同システムの導入効果や先行事例をまとめたガイドを作成する予定だ。

学校においては、コンピュータを活用した学習活動など、教職員だけでなく、児童生徒が日常的に情報システムにアクセスする機会があるなど、自治体の他の行政事務とは異なる点がある。また、実際に、学校が保有する機微情報に対する不正アクセス事案が発生していること等も踏まえ、学校現場ならではの特徴を考慮した情報セキュリティ対策を行うことが不可欠となっている。そのため、文部科学省では、平成29年10月に学校における情報セキュリティポリシーの考え方及び内容を解説した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を策定し、地方公共団体への普及・啓発に取り組んでいる。各地方公共団体においては、本ガイドラインを地方公共団体が設置する学校を対象とする情報セキュリティポリシーの策定や見直しを行う際の参考として、首長部局と連携しながら情報セキュリティの確保に向けて取り組んでいただきたい。

【講師】文部科学省情報教育課・梅村研課長

 

【第45回教育委員会対象セミナー・東京:2017年12月6日

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