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教育ICT

大学入試改革に対応~東洋大姫路中高の学校改革

2018年1月1日
主体的・対話的に学び合う仕掛けをつくる
橋本俊雄校長
橋本俊雄校長

学校改革は教員の意識改革から

高等学校において、主体的・対話的に学び合うことで深い学びを実践するためには「大学入試」の在り方が課題であると指摘されていた。その大学入試を変える「高大接続改革」「大学入試改革」が着実に進んでいる。新しい入試への対応について、東洋大学附属姫路中学校・高等学校の橋本俊雄校長は「学校改革は付け焼刃では実現しない。学校改革とは教員の意識改革である」という。同校の学校改革は橋本校長が8年前、同高校に副校長として就任してから始まった。「主体的・対話的に学び合う」教育は、新しい大学入試だけではなく、大学入学後や社会人になってから必要な力を育むものであると語る。

東洋大姫路中高の学校改革

必要なリテラシーは情報編集力と情報発信力

橋本校長の前身は県立学校の物理教員だ。当時在籍していたのは、理科教育に定評のある兵庫県立龍野高等学校。ここでは「実験で様々なデータを収集して生徒自らの力で物理の法則を見つける」教育を徹底して行っていた。従来の「法則を学びそれを確認する検証実験を行う」ものとは逆のアプローチだ。また、放送部の顧問として番組制作などを指導する中で、生徒たちは主体性、協働性、思考力、判断力、表現力を育んできた。
「多様化する現代社会を生き抜くにはこれらの力が重要だと感じ、本校で取り組みたいと考えた」と語る。
東洋大姫路の学校改革は平成23年、高等学校に「スーパー特進コース」の設置から始まった。豊富な学習時間に加えて、独自の「深く考える力」を育むプログラム「キャリア・フロンティア」では文章を書く作業を中心にすえ、主体的に課題を見つけ、調べ、考え、計画し、行動できる人間を育成する。過去3年間の国公立大学現役合格率は71%、2年連続大阪大学に合格するなど、進路面でも結果を残している。

■「考える力を学ぶ」プログラムに
さらに、平成26年に姫路市初の男女共学の中高一貫校「東洋大学附属姫路中学校」を開校。同中学では、スーパー特進コースで開発した「キャリア・フロンティア」を同校のスローガン「考えるを、学ぶ。」にふさわしいプログラムに再編成して実践した。
中1では姫路・神戸研究や個人新聞づくり、職業調べ等を通して「考える力を育む」ための基礎・基盤をつくる。中2では「考える力と発信力を鍛える」ことを目標に弁論大会やEnglish Spring Campで訪れる富士山の魅力を調べ、英語で発表。中3では、京都の有斐斎弘道館を訪問して伝統文化について調べ、ポスターセッションを実施。高1では東洋大学大学院バイオ・ナノエレクトロニクス研究センターに行き、課題研究。事前学習ではテレビ電話を使って研究者の指導を何度も受けた。同センター長を招いた研究発表会では、同校生徒のレベルの高さを示すことができた。
また、グローバル人材の育成を目的とし、英語の授業時間は公立中学の約1・5倍で、少人数による英会話授業や「国際交流プログラム」を展開している。中1では英語暗唱大会、中2では東洋大学の教授・留学生と英語だけで2泊3日を過ごすEnglish Spring Camp、中3時にはニュージーランドやオーストラリアで約2週間にわたる語学研修を実施。オーストラリアの姉妹校から2年に一度ホームステイを受け入れるなど学校間の交流も取り入れている。高2では、カナダのトンプソンリバース大学と課題解決型学習の実施を予定。「移民政策」をテーマに挑戦し、生徒のレベルアップを目指す。
保護者会では、校長の思いを伝えると共に保護者からのアイデアも取り入れるなど「共育」を実践。校長は「キャリア・フロンティアと国際交流プログラムを通じて育まれる情報編集力と情報発信力こそが、難関国公立大学合格に必要なリテラシーである」と語る。

■効果測定も
効果測定も細かく実施。生徒の成績の伸びや意識の変容を数値化して改革や改善に活かしている。「中学校開設以来丸3年を過ぎ、ようやくスタートラインに立つ準備ができた。様々な取組を通して教員の意識や行動が変わるにつれ、生徒も変わっていった。今の取組がベストとは考えていない。毎年、より良いアイデアを取り入れていく。楽をして良い生徒は育たない。生徒と教職員が共に成長し続ける学校としたい」と語る。

学校改革が進むにつれ印刷物が増大した

印刷物
印刷物
多岐にわたる生徒の成果物(写真上)を短時間で印刷できるようになった

同校の生徒の学びの成果は、多くの「印刷物」にまとめられている。
学校長方針が浸透して教員が熱心になり生徒が真剣になるほど、印刷物が増えていった。
100人の教員が生徒約1300人に対して、新しい教育課程に合わせた教材を作成する。生徒は1人ひとりが様々な学習で分厚い成果物を制作。オープンキャンパスや入試説明会には、細かいデータや生徒の最新の活動を掲載した新たな資料を都度制作。入試問題も一部が内製であることから、教育改革が進むほど印刷枚数が増え、ランニングコストが増大するという課題が生じた。職員室、事務室、各教科教室などに、レーザープリンター(LP)を中心に印刷機約20台を所持。印刷機は多いにも関わらず、一度「大量」印刷が始まるとプリンター前に列ができることもあった。
同校の岡庭晋司課長補佐は、「LPは、カラーを大量に印刷すると途中、色調整や紙詰まり、紙の補充などで止まり、カタログ記載値の時間通りには印刷できなかった。1万枚の印刷物を制作するのに半日はかかっていた」と語る。この印刷に関する負荷を減らす必要があると考えていた時に出合った新製品が高速カラーインクジェットプリンター「LX-10000」(エプソン)だ。
岡庭氏は「インクジェットの大型印刷機、という新しい概念に驚いた。印刷は1分間に100枚程度と速く、立ち上がりも速い。印字も美しく、これであれば、入試説明会などで大量に作成・配布する外部向け印刷物としても遜色がないと考えた」と話す。カラーコピーやスキャナができる点も同校ニーズに合致した。
そこで今年度から、「LX-10000」を事務室に1台、職員室に2台、計3台導入。いくつかあるプランの中で、月々定額で印刷できるプランを選択。事務処理経費として扱える点もニーズに適合した。基本料金に含まれる印刷枚数をほかのプリンターと分け合える(グループ割引)ので学校全体の印刷コストを大幅に削減できた。さらに学校内のプリンター約半数を撤去でき、空間にも余裕が生まれた。
「最も重要なのが、これまで一日かかっていた印刷が30分程度で終わるようになったこと。オープンスクールでは多いときには約900人が来校する。印刷スピードが速く印字がきれいなことは必要条件」と語る。
教員にも好評だ。印刷が速いので授業の合間にさっと印刷できる。印刷機の前で待つことがほぼなくなり、教員の働き方改革にもつながっている。

■次年度から生徒も1人1台端末を活用
ICT環境の一新も計画中だ。
情報教育棟を始めとして同校には教育用PCが約130台あるが「今後はPCが並んでいる部屋で学ぶだけでは不足」と考え、すべての敷地内で無線LANを整備。ネットワーク回線も太くするなど次年度の中学校入学生からの生徒1人1台環境に対応すべく準備を進めている。既に生徒用機種は選定済で、スタイラスペンによる書き込みもできる10・1〓タブレットPCを予定している。「インフラは学校が準備、情報端末は保護者負担」という方針だ。
提示環境については、理科室、技術室、家庭科室、多目的室などにはプロジェクターなどを整備済で教員は情報端末を使って活用している。生徒主体の活用が増えることで、今後、増強に着手する段階に入ったと語った。

学校法人東洋大学
東洋大学附属姫路中学校・高等学校 ℡079・266・2626(中・高共通)

既に始まっている大学入試改革

大学入試改革は「2020年に突然始まる」わけではない。既にスタートは切られている。大学入試改革を見据え、高等学校や私立大学の入試問題、国立大学の二次試験、センター入試において、教科横断的な問題や「考える」力を問う「記述問題」が増え始めている。センター試験問題に変わる「大学入試共通テスト」は現在の中学校3年生からが対象だ。「新しい大学入試対応できる教育内容である」ことを訴求した生徒募集を始める私立中高等学校も増えた。スーパーグローバルハイスクール(SGH)やスーパーサイエンスハイスクール(SSH)、「21世紀型学力」や「PISA型学力」もしくは「社会に出て役立つ力」「全人的教育」にかねてから取り組んでいる学校には一日「以上」の長がある。さらに進学率が高いほど入試改革への対応がより積極的であるという調査結果も出ている(ベネッセ「第6回学習指導基本調査 DATA BOOK(高校版)2016年」)。

多様化する大学入試

「2020年」に先駆けて東京大学や京都大学、大阪大学などが新しい入試を導入している。
東京大学「推薦入試」ではグループディスカッションやプレゼンテーション等が課せられる。
京都大学「特色入試」は、「学びの設計書」などの提出が必要。総合問題、論述試験、口頭試験、数学に関する能力測定試験などが学部や科によって課せられる。
大阪大学「世界適塾入試」は、志望理由書や志願者評価書のほか、学部や学科により、英語関連の外部試験スコアやSSH、SGHの活動等証明書など出願者の活動成果を求める。
お茶の水大学「新フンボルト入試」では、志望理由書や活動証明書、英語関連の外部試験スコアの提出による一次選考を実施。二次選考ではグループ討論や面接のほか、文系では「図書館入試」を実施。附属図書館で図書などを参照しながら課題についてのレポートを作成する。理系の「実験室入試」は、実験を行い、実験データをもとにして考察、 黒板などを使って考え方を説明、グループ討論や面接を行う。

新しい入試に効く高等学校独自の取組

平成14年度から計8年間SSHの指定を受けていた群馬県立高崎高等学校では指定終了後、SSクラス(SpecialScience)やHS(HumanScience)、CSSプログラム(CareerSearchScience)を実施。CSSは社会的職業的自立に向けて必要な知識、能力、技術、態度を養うために設定された科目で、TOEIC講座(650点目標)、表現力養成プログラム、課題研究、論文執筆、海外研修などを行う。なお平成28年3月から再度SSHに指定を受けている。
〓友学園女子中学高等学校(東京都)の英語の授業は中1からすべて英語。理科の授業は9割が実験。
東京都立国立高校では、難関大学に在学する卒業生がサポートティーチャーとして定期考査前の勉強や学校生活、進路相談ほかに応じている。「日本一の文化祭」と紹介される学園祭は有名。ここで培われる力がクリエイティブ系企業の就職に大変強い理由の1つと紹介されたこともあり、独自の文化を確立している。

中高一貫校の特色ある入試

中高一貫校では、大学入試改革を見据えた生徒募集が一部で始まった。
21世紀型学習スタイルを提唱しているかえつ有明中・高等学校(東京都)では、クリティカルシンキングの手法を取り入れた「思考力入試」「思考力特待入試」や対話やディスカッションが重視される「アクティブラーニング思考力特待入試」などを実施。21世紀型学習スタイルとは、PIL型(教え合い学習)、PBL型(問題解決型学習)、TOK型(知の理論)。中学校の独自教科「サイエンス科」は、論理的な思考トレーニング。情報スキル、メモテイキング、論文指導、クリティカルシンキングなど多岐にわたる。高校ではこれを基に論理的思考力の発展・応用として「総合学習」を行う。
日出学園中学校・高等学校(千葉県市川市)は、平成30年2月1日から、新たに「サンライズ入試」を実施。1人につき10分程度の口頭試験で、判断基準は「出題に対する解答として適切か」「相手に伝わる表現か」など。試験内容は、例えば「電話の相手にアメリカかフランスの国旗を説明しなければなりません。あなたならどう説明しますか」など。このほか次の学校が新しい入試を始めている。▼西大和学園中高(奈良県)「21世紀型特色入試」「英語重視型入試」▼共立女子中高(東京都)「合科目論述試験入試」▼桐蔭学園中・中等教育学校(神奈川)「アクティブラーニング入試」▼工学院大学附属中高(東京都)「思考力テスト」▼宝仙学園中高(東京)「リベラルアーツ入試」「グローバル入試」

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