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教育ICT

各教科・各学年でプログラミング

2017年3月6日
特集:次期学習指導要領の準備を始める

1年道徳でプログラミング<埼玉市立七里小学校>

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情報端末なしでプログラミングできる「PETS」。爆弾を避けながら鍵を獲得してゴールにたどり着くにはどうすればよいのか「指令ブロック」の順番を考える

「曲がりすぎた!」「どこを直す?」「もう一度やってみよう」――さいたま市立七里小学校(丸山雅夫校長・埼玉県)1年の児童が夢中で取り組んでいるのは、プログラミング教材「PETS(ペッツ)」(for our kids)だ。これは、「右」「左」「前進」「後退」「繰り返し」などのブロックを車体上に挿し込むと、その命令通りに動くプログラミング学習用ロボット。2月6日、七里小学校では1年「道徳」で、プログラミングの授業を実施した。授業者は埼玉大学教育学部・山本利一教授。

PCなしで命令・実行・検証

山本教授が「右」と言うと、車が「右」を向く。「前」と言うと「前」へ進む。「どうして車は、言う通りに動くと思う?」と聞くと「先生の言葉を理解している!」と答える児童。続いて、指令なしでも同様に「右」「前」と車が進む様子を見て「さっきの指令を車が覚えている!」と言う児童もいる。山本教授は車に、「右」や「前」に動く「命令」が入ったブロックを入れていること、それをプログラミングと呼ぶことを説明した。

「それではみんなの机の上にあるものを使って命令通りに動かしてみよう」

児童が前方で説明を受けている間、サポートの大学生たちがプログラミング教材「PETS」を児童の机上に設置。見たことがない新しいものに児童は興味津々で、早々に自席に戻った。

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ブロック(右)を順番に挿入することでPETSの動きを命令できる

本授業では「道徳」の「主とした集団や社会との関わりに関すること」において「規則の尊重」を学ぶ場面で、プログラミングの順次処理を取り上げて「順番の大切さ」を学ぶ構成とした。社会的なルールの1つ「順番を守ること」の重要さについて、山本教授は事前に説明しており、PETSも「順番通り」の「命令」によって思い通りに動くと説明。最初は全員で、PETSを「命令」通りに動かす体験を共有した。

その後は3人1グループで、9つのマス目上のコースに設置した「爆弾」をよけながら「カギ」を獲得して「ゴール」を目指すプログラミングに挑戦する。

ゴール直前に動きが止まったり、同じ位置で一回転したり、マス目からはみ出してしまうこともあるが、頭をくっつけ合って相談しながら、夢中になって再チャレンジ。「実行」ボタンで、ロボットが思った通りに動くかどうかを見守る眼差しは真剣だ。

思い通りにゴールにたどり着くと、思わず拍手。「やったー、できた」とガッツポーズをしたり両手を上げて喜んだりなど、どのグループも達成感を感じているようだ。

山本教授はこのほか、自分で作曲できるオルゴール「オールメイ(Allmay)」や、PC画面上のキャラクターが指示(コード)通りに動く教育ゲームツール「Swift Playgrounds」(iPad用プログラミング学習アプリ。初心者から本格的なコードまで段階的に学べる。プログラミング言語はSwiftを使用。無料)を紹介した。

授業終了後、児童は「メチャ楽しかった~」と満足そうに教室を出た。1時間の授業であったが、楽しみながらプログラミングの初歩を理解できたようだ。

道徳の授業とプログラミングを結びつけたことで、バス停で「順番」に並ぶ度に今日の授業を思い出す児童が増えそうである。

4年国語でプログラミング<相模原市立旭小学校>

次期学習指導要領では、プログラミング教育を各教科に盛り込むことが求められている。相模原市立旭小学校(二宮昭夫校長・神奈川県)で2月9日、国語科の授業「めざせ、報告文マスター!」が行われた。プログラミング教材は「WeDo2・0」(レゴ・エデュケーション)を活用。本授業では論理的な思考力と国語の「書く力」を養うことがねらい。

“書く力””論理的思考力”育む

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「障害物を自動で検知して停止できるようにする」プログラミングに挑戦。プログラミングで考えたことや感じたことをレゴの担当者に「報告書」としてまとめる

当日は4学年の児童35名が授業に参加した。児童は3人1組のグループでロボットプログラミングに挑戦し、その結果を報告書にまとめる。

「WeDo2・0」には、「科学探査機型」や「ヘリコプター型」「レーシングカー型」などのロボットのプログラミング手順を示したサンプルモデルが収録されている。児童はそこから作りたいものを選んで、ブロックを組み立て、プログラミング学習に取り組んだ。

「科学探査機型」ロボットを選んだグループでは、「ロボットにセンサーを取り付けて、障害物を自動で検知して停止できるようにする」プログラミングに挑戦。センサーがうまく動作して「予想した位置でぴったり止まった」と喜ぶグループ、「なんでセンサーが動かないの?もう一回、実行してみて」と作業終了直前まで試行錯誤し続けるグループもいる。

回数を重ねる度に学びが増える

授業の最後に児童は、「考えた分だけ良い作品になることが分かった」、「いろいろなパーツを組み合わせることで予測通りに動かせた」と様々な意見や感想を発表した。

授業者の荒木昭人教諭は、意見共有の内容について「感じたこと」「学んだこと」別に記録している。「プログラミング学習の回数を重ねるごとに『学んだこと』の発言が増えている。児童の考えて学ぶ力が育っている」と話す。

ミッションは報告書の作成

今回の実践では、児童のやる気を引き出す仕掛けもあった。前時にレゴ社のビデオメッセージを児童に紹介。「授業で考えたことや感じたことを報告書にまとめてほしい」といった内容で、それを聞いて「企業の人に伝わる報告書を書きたいからプログラミングをがんばる」と真剣にメモを取る姿が見られた。

荒木教諭は「『報告書をわかりやすく書きたい』という目的を児童にもたせることで、課題により主体的に取り組めるようにした」と語る。

教員研修を実施

荒木教諭は「プログラミング授業は、教員も児童もスタートラインは同じ。夢中で取り組む児童の方が詳しくなることもある。プログラミング教育の必修化に向けて、教員研修にもプログラミング教育に関する内容を盛り込む必要がある」と話す。

相模原市立総合学習センターの岡部竜生指導主事は、「夏季休業を利用して、スクラッチなどを使った教員研修を行う予定。新学習指導要領の全面実施に合わせて、様々な実践を進めながらプログラミング教育に対応できる環境を整えていきたい」と話した。

5年生がプログラミング初挑戦<白百合学園小学校>

講師派遣を利用

白百合学園小学校(斉藤えい校長・東京都)の5年生(3クラス116名)は1月26~28日、「Scratch」(スクラッチ)を使ったプログラミングの授業を行った。

講師はIT人材の派遣事業を行う株式会社VSNのIT研修担当者が務めた。同社は、全国の小学校へプログラミングの専門講師の無料派遣を行っている。

Scratchは、文字列をドラッグアンドドロップしてパズルのように組み合わせるだけで画面上のイラストやキャラクターに「上下・左右へ動かす」、「壁に当たったら跳ね返る」などの動作を設定できるプログラミング言語だ。

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「ペンがリンゴに刺さる」アニメーションをプログラミングする

講師は、児童の情報端末に「ペンがリンゴに刺さる」アニメーションを送信。児童は、アニメーションと同じ動きをプログラミングで再現する。そのためには、ペンとリンゴをただ動かすだけでなく、イラストごとに移動させたい位置の座標を指定する必要がある。

正確な位置に動かすのは難しいが、投げ出す児童は1人もいない。

進捗の早い児童は、効果音を設定する、イラストを回転させるといったオリジナルの動きを加えるプログラミングに挑戦していた。児童は自分とクラスメイトの作品を見比べながら夢中で取り組んだ。

「自分のアイデアを形にできるからおもしろい」、「自分で遊べるゲームを作ってみたい」と語る児童もいる。5学年担任の下谷教諭は「児童が喜んで意欲的に学んでいた。新学習指導要領の実施に向けて、今後もプログラミング教育を検討していきたい」と話した。

VSN広報の江口氏は「子供が楽しみながら学べるScratchは、小学生のプログラミング授業に最適。今後も講師派遣サービスは継続して行っていく予定。地方の小学生にもプログラミング学習の機会を提供していきたい」と話した。

海外交流でプログラミング<文京区立湯島小学校>

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電子辞書も活用しながら紹介文を英訳する
5
海外交流のためのWeb制作に向けてスクラッチで「かぐや姫」を作成

交流校向けにWeb制作

東京都の情報モラル推進校である文京区立湯島小学校(原香織校長・東京都)は2月10日、研究報告会「主体的に判断し、よりよく情報を活用する児童の育成~家庭・地域との連携を通して~」を開催し、「情報モラル」及びICTを活用した「湯島モデル」を視野に入れた15授業を公開した。

情報モラル教育を視野に入れた授業は、1年、2年、6年の学級活動と5年の総合的な学習の時間。「湯島モデル」を視野に入れた授業は、情報モラル教育の視点も盛り込みながら全教科で公開した。

5年「総合的な学習の時間」の「海外の友達とインターネットを使って交流しよう」では、海外交流校に向けたWebを制作。「プログラミング」「海外交流」「情報発信」と多くの要素が盛り込まれた内容だ。子供たちは、スクラッチ係、記事作成係、英訳係の3つの役割グループに分かれて学習活動を展開。スクラッチ係は1人1台の情報端末を活用して日本昔話「かぐや姫」のストーリー動画を「スクラッチ」でプログラミング。

記事作成係は2~3人に1台の情報端末を活用して、互いに記事内容について相談しながら、情報モラルや、スクラッチを外部講師から学んだ思い出などの記事を作成。

英訳係は、1~2人に1台の情報端末と電子辞書を活用して、記事作成係が作った学校紹介や国際交流活動の感想を英訳した。

6年生「学級活動」では、全校情報モラル集会開催のための準備を進めた。学習したことを下級生にわかりやすく説明するための方法や、これまでの学びを下級生に引き継ぐための方法について話し合いを進めていた。

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同校の情報モラル教育の実践について、千葉大学教育学部副学部長の藤川大祐教授は「湯島小学校の研究では、常に学校を外に開き、詳しい人に学びながら成果を出して公の場で評価を受けるという流れが確立している。PDCAのサイクルが構築された好例」と話す。総合的な学習については、「具体的な学習課題が設定されており、能動的な学びを促していた。アクティブ・ラーニングの事例として示唆に富む内容」と評価した。

高校生が小学校で出前授業

プログラミングを教える

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豊水さん(左)と森さん

国際基督教大学高等学校の3年生18名が、にしみたか学園三鷹市立第二小学校で、2月21日、4年生を対象にプログラミングの授業を行った。

国際基督教大学高等学校(ICU高校)の3年生18名は、日本HPが主催する「HP e-Education Initiative~プログラミング教育の普及支援活動~」に参加し、今回の第二小学校で出前授業を実施した。4年生3クラスで90分の授業を行い、ビジュアルプログラミング言語スクラッチを使ってクラス毎に、落下してくる障害物を避けるゲームと、マウスでキャラクターを動かして壁に触れずに迷路を脱出するゲームを作成した。

落下物を避けるゲームを作成したクラスでは、画面上で物を動かすためにはX軸Y軸を使って位置を示すことや、画面の上でブロックを組み合わせて動きをプログラムすることを高校生が説明した後、児童が実際にゲームの作成に取り組んだ。生徒は、机を回りながら個別に児童の質問に答えながら、一緒にゲームを作成した。

教材研究はLINEで

ICU高校の生徒は、昨年11月に課外授業として3回、大学生からスクラッチでゲームを作成する授業を受けた。この時の受講生40名の中から希望者が小学校での授業を行うことになり、準備をしてきた。ICU高校の松尾哲朗教諭は、「大学進学が決まった生徒は、卒業までの期間をどのように過ごすかが課題だ。今回の出前授業を実施するに当たり、10時間かけて、教材作成や授業方法の検討を行った。さらに生徒はLINEなどで打ち合わせを行っていたようだ。生徒にとって、プログラミング体験に加え、体験学習、協働学習という側面が重要だった。大学生に教わる、教材を考える、経験のない小学校での授業に向けて指導法を検討する。小学生に教えるという体験は、高校生にとって貴重な体験となったはずだ」と語った。

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初めてのプログラミングに挑戦する小学生

生徒は事前に2時間のミーティング2回、4時間のリハーサルを1回、そのほかにGoogle Docs.を共有しながらコメントをLINEで交換し、約1か月半をかけて教材をつくった。授業を行う上の基本的なことはアドバイスを受けた上で、工夫を加えた。まず実演することで、各コマンドがどのような意味か、どうすれば障害物が落ちてくるかなど、具体的に示した。また30人以上いる児童の進度が違うことは最初から予想していたので、高校生サポーターをなるべく多くつけ、遅れてしまう子供が出ないように注意した。各サポーターは周りの子供がOKだったらグッドサインを出すことも決めていた、という。

講師を務めた森裕希子さんは、「2月は予定がなく、ちゃんと授業ができる、面白そうだと思い参加した。実際予想外のことが多かった。遅れる子が出る、プログラムが動かない、起動に手間取る。授業を作るって大変だなと実感し、先生ってすごいことをしているんだと分かった」と話した。

教師になりたいという豊永紅美子さんは、「教えることを高校生のうちに体験してみたかった。授業ではなかなか静かにならず、静かになるまで待つと時間が足りなくなり、話し出すタイミングが難しかった。また自分では理解しているつもりでも、ぜんぜん違っていて、入念に予習しておかないとうまく教えられないと感じた。授業では画面のスクリプトを見ながら教えていたが、もっと小学生の顔を見て教えられたらよかった」と話した。

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