フルノシステムズ 代表取締役社長 妹尾行雄代氏 |
平成22年にフルノシステムズ代表取締役社長就任。業績不振だった同社を1年で黒字化し、当時細々と継続していた無線LANシステムを文教向けに販売強化することを決めた。教育の情報化の波も後押しし、文教分野の無線LANメーカーとしては現在トップランナーに位置している。「今期の利益率は過去最高。そのうち6割が文教分野」だ。同社の無線LANシェアは約2割(同社推定)だが新規の文教分野では約6割(同)を占める。文教市場に注力すると決めて約3年でトップランナーになった理由を同社妹尾行雄代表取締役に聞いた。
30年前から「ハンディターミナルのためのAP」として開発をスタートした同社の無線LAN。ハンディターミナルには、正確な在庫を把握した上で、スピーディに出荷指示や生産指示を出すなどの「即時性」が求められる。無線でデータのやり取りをすることが多く、そのための無線APを開発していた。
ハンディターミナル用のAPは、ノートPCからも接続できると考え、平成18年、無線技術を継承して無線LANを管理するソフトウェア「UNIFAS」(ユニファス)が誕生。「無線LANのパイオニア」として新たなスタートを切った。主力製品ではなかった無線LANを文教市場に特化して取り組む方針を決めたのが、妹尾氏だ。
なぜ、ホテルや病院ではなく、学校だったのか。
平成23年、総務省でフューチャースクール推進事業がスタート。ここで初めて「無線LAN」の学校ニーズの可能性が周知された。「国の源は教育である。当時、無線LANシステムは海外製のものが主流。日本の学校には日本の高い技術力を駆使した製品を導入したい、という思いがあった」と語る。
平成25年、クラウド無線LANに対応した「UNIFAS」は、近畿地方発明表彰において「ネットワークおよびその管理方法」で「発明奨励賞」を受賞。さらに西宮市教育委員会のニーズに合わせて動画対応AP「ACERA850M」も開発。教育委員会などに製品の認知度が上がってきたのはこの頃だ。
「無線にはトラブルが多く、高い技術力や知恵、人的サービスが求められる。干渉を受けにくくつながりやすいという品質と機能、開発力に加えて、ユーザが困ったときにすぐに出向いて問題を解決する、というハンディターミナル時に培われた社風が学校ニーズにマッチした」
教育委員会など自治体には横のつながりもあり、口コミでも広がった。
「技術は追いつかれることもあるが、親会社である古野電気(兵庫県西宮市)の技術的なバックアップを得ながら、文教市場でのトップランナーの位置は譲らない気持ちで絶えず新しいものづくりに挑戦していきたい」と語る。さらに今後は防災や病院、ホテルなど幅広い分野への挑戦も視野に入れている。
フルノシステムズは、総務省「防災等に資するWi-Fi環境の整備計画」に対応する無線LANシステム「UNIFAS」で、防災整備計画を支援する。
「UNIFAS」は、各学校内に設置した無線APを集中して管理、災害時には一括してWi-Fi環境を「フリーアクセス」に自動で切り替えることができる。自動切換えに加え、ワンタッチ操作により手動で切り替えることもできる。大型ディスプレイに教員用情報端末画面を提示するミラーリング機能対応モデルも提供している。
さらに今後、全国瞬時警報システム「J-ALERT」からの通知に連動する予定。ミラーリング機能対応モデルを活用した掲示板機能も提供。これにより「災害時の指示」「避難経路」などを非常時に掲示できるようにする。平時は学校の情報発信掲示板として活用できる。
専任のWi-Fiアドバイザーが整備・導入検討をサポートする。電波環境の簡易調査等については有償。