11月2日に札幌市内で開催された本セミナーには主に北海道内から約130名の教育関係者が参集した。本セミナー講演内容を抄録する。
札幌市立屯田小学校・新保元康校長 |
新保校長は、10年間にわたり4校の学校長としてICTプラスアルファによる働き方改革を目標に学校改善に取り組んでいる。「機器やシステムの導入は学校のインフラとして大前提。そのうえで日常の使い方の工夫や周辺整備が必要」と述べ、その考え方と具体例を紹介した。
学校長として4校共通した方針で進めてきた。1つは安全安心の充実や学習面などで成果を挙げ、信頼される学校にすること。2つ目に、安心して働ける学校づくりを心掛けること。さらに、社会貢献していくこと。地域の中の学校として大事なことだ。
勤務時間の削減が話題になっている。これは、より質の高い教育の実現と同時に進めなければならない。その解決手段の1つが情報化である。学校全体を支えるインフラとして情報環境が下支えとなり、様々な問題の解決に結び付いていく可能性がある。
札幌市立の小学校では、全普通教室・特別教室に大型テレビや実物投影機が整備され、校務支援システムも導入されている。こうしたインフラがあるからこそ、様々な取組ができた。情報化とは、より新しい機器やシステムを導入することのみではなく、プラスアルファが必要だ。
まずは「どの教員でもすぐ使える環境、学年が進行しても変わらない環境」を意識して整えた。例えば実物投影機やPCなどの教室のICT機器は、常設して場所を固定することが大前提だ。
実物投影機は教科書や児童のノートを映すことができる、コストパフォーマンスの高い機器だが、使いやすい場所に固定すると、さらに活用が進む。十分な広さの専用台を用意して粘着マットで固定する、長めの配線等を結束バンドですっきりさせるなど、導入時に細かい点に気を配ると、機器がより生きてくる。
遮光カーテンの長さは最低でも2・7mはほしい。また、提示機器は教室の出入り口と反対側の設置のほうが児童との接触が少なくなり、より安全に活用できる。学年、学級が違っても同じ位置にあることが重要だ。
ICTだけではなく、学習規律を統一したり、学校全体の標準的なルールを明示したりして、落ち着いた学校環境、教室環境づくりも心がけた。
校務支援システムについても同様のことが言える。そこに様々な運営の工夫を加えことで、効果が出てくる。
教員も今までの仕事のやり方をなかなか変えたがらない。そこで校務の方法を変える時にはまず校長室から変え、学校長の姿勢を示すようにしている。
例えば校長室はたいてい応接室になっているが、そこにパイプ椅子やホワイトボードを入れ、会議ができるようにした。そこに様々な担当者が入り、学校改善の話をすることで、校務支援システムの有用性の理解につなげている。
今は早出、遅出など様々な出勤形態があり、全教職員が朝に揃うのは難しい。そこで、朝会を廃止し、校務支援システムの掲示板機能を活用して全員が情報を共有している。
職員室も改造した。教職員のみ立ち入れるゾーン、保護者・児童生徒や外部の方が立ち入れるゾーンなどの区分けをし、個人情報を保護するスペースを物理的に確保。これは簡単かつ効果抜群で、職員室の「物理的分離」によるセキュリティ確保につながる。
保護者とのコミュニケーションを充実させるスペースも設けた。職員朝会はなし。職員会議は年4回。代わりに校務連絡会を週1回実施している。こうした工夫で教員は児童と向き合う時間が増えた。システムによって児童の健康状態を把握する。インフルエンザなどの情報を早期に発見し、いち早く対応できた。
【講師】札幌市立屯田小学校・新保元康校長
【第44回教育委員会対象セミナー・札幌:2017年11月2日】