12月6日、東京・KFCホールで第45回教育委員会対象セミナーを開催した。6人の講師によって行われた講演の内容を紹介する。次回の第46回教育委員会対象セミナーは、2月2日に福岡・パピヨン24ガスホールで開催する。
千代田区立神田一橋中学校・太田耕司校長 |
神田一橋中学校に平成24年に着任した太田氏は、ICT環境整備後の活用や英語授業など、現場での様々な事例を紹介した。
校舎改修工事の始まった25年7月の段階では、「普通教室のICT環境整備のステップ」でいうステージ1ですらなかった。そこから千代田区の情報教育推進校として、改修期間の13か月で一気にステージ4まで整備した。生徒に学習用端末、教員に教員用端末を1人1台整備、充電保管庫を教室に設置、教室を2画面活用、黒板を全面使用するためのインタラクティブホワイトボードの活用などで、教員が機器を簡単に使える環境作りを大前提とした。
アクティブ・ラーニングとICTの活用は別のものではあるが親和性は高い。ICTをうまく使ってアクティブ・ラーニングができるようにすることが必要だ。
実際の家庭科の授業では、教員用端末を使って教員の目線の高さからミシンの使い方を撮影した動画を映しながら、使い方をわかりやすく説明した。英語の授業では、スピーキングソフトを活用している。生徒はヘッドセットを使い、流れてくるネイティブの声を聞き取り、真似して発声する。それが点数化され、一定の点を超えると次の課題に進める仕組みだ。
7時間目、8時間目と呼んでいる放課後には、様々な講座を用意。生徒が自由に受講している。そのうちの一つの自由教室は、小さなプリンターを1台置き、各自が教材をプリントアウトして解き、大学生のボランティアがサポートする取組で、勉強の機会につながったと語る。プログラミング教室では協働する企業の講師を招いてプログラミングを学び、最終回には保護者を呼んで発表会を行った。
ホームページも活用している。トップページの各学年・各教科のページにパスワードを入力してアクセスすると、定期考査の勉強の仕方やドリル教材、授業で使ったプリント類などを入手できる。家庭での学習につなげるのが狙い。
情報モラルについての話もしている。生徒は毎月1回朝、情報モラルに関する動画を見て簡単な感想を書く。保護者への啓発も重要で、保護者会ではその動画を保護者会が始まる前に放映している。
ICT環境整備で一番大事なことは、ルータやアクセスポイントなどを始めとしたインフラを整備すること。どんなに優秀な機器を入れてもインフラがないと動かない。次に、常設環境を整備すること。現場の教員が使いたい場所にあって端末さえ持ち運べばすぐ使えるようにすることが大切だ。さらに、教員や生徒に本当に必要なソフトやアプリは何かを考えることも大切だ。
教員の研修環境をどう整備していくのかも重要。本校では教員が互いに授業を観察し合い、使い方を指摘したり考えたりする研修を実施している。
現在、ICTを授業に組み込む段階まで来ている。何のためにICTを使い、それによって生徒はどんな力が身に付くのか。教員1人1人がそれを意識しながら授業を行うことで授業改革につながり、生徒の情報教育力を高めることになる。ひいては学力向上にもつながると考えている。
【講師】千代田区立神田一橋中学校・太田耕司校長
【第45回教育委員会対象セミナー・東京:2017年12月6日】