オスモコーディング |
G7 Programming Learning Summit(G7PLS)実行委員会は、「第1回G7PLS」で実施したプログラミング学習ワークショップとその調査結果について報告した。
ワークショップでは、2~6学年の児童約60名が参加し、6つのブースに分かれて、それぞれ異なるプログラミング学習ツールを体験。活動の事前事後にテストとアンケートを行って、各ツールが児童のプログラミング学習に対する意欲や理解度にどのような影響を与えるか調べた。ゲーム、ビジュアルプログラミング言語、アンプラグドなど多様なツールの中から、学校現場での活用率や知名度の高いものを選出して検証した。6ツールの概要は以下。
▼CodeMonkey∥画面上のキャラクターの動きをキーボード入力でプログラミングして、ゴールまで誘導するドリル形式のゲームソフトウェア ▼Lightbot∥前進、進行方向変更、光らせるといったキャラクターの動作を画面上のパネルを組み合わせて操作し、コース上の指定された位置を光らせるゲームソフトウェア
アンプラグドでプログラミングを学ぶ ボードゲーム「ロボットタートルズ」 |
▼Osmo Coding∥実際のブロックを組み合わせて画面上のキャラクターを操作するプログラミング学習ツール ▼Robot Turtles∥紙のカードを組み合わせてボード上のキャラクターの動きをアンプラグドでプログラミングし、ゴールまで誘導するボードゲーム ▼Scratch∥画面上の文字パズルを組み合わせることで、キャラクターの動きや画面の背景、BGMなどを設定できるビジュアルプログラミング言語 ▼Viscuit∥画面上に描いたオリジナルのイラストをドラッグアンドドロップでプログラミングして動かせるビジュアルプログラミング言語
条件分岐や逐次実行、繰り返し、抽象化などプログラミングの基本的な概念を計測するテストとアンケートを事前事後で比較すると、どのツールにおいても得点やプログラミング学習に対する興味や意欲が向上する傾向が見られ、さらに、例えば「CodeMonkey」では条件分岐問題の正答率や物事を説明する能力、「Viscuit」では創造力や物事を抽象化する力が際立って向上するなど、ツールごとに育まれる能力が異なる可能性が示された。
G7PLS実行委員会会長の鷲崎弘宣教授(早稲田大学)は「プログラミング学習を実施するうえで重要なことは、養いたい力や授業の目的に応じて、プログラミング学習ツールを使い分けていくこと。ツールはそれぞれ異なる性質を持っており、児童の想像力を引き出しやすいもの、論理的思考を養いやすいものなど様々だ。実行委員会では、引き続きワークショップなどを行って、各ツールの特性や長所を検証、データ化し、次期学習指導要領の実施に向けて、プログラミング教育の指標となるような情報を発信していく」と話した。
本フォーラム総括討論のテーマは「思考力を高めるICT活用」。パネリストは、平井聡一郎・古河市教育委員会教育部指導課長、益川弘如・静岡大学准教授、三宅喜久子・NPO法人学習創造フォーラム理事、山本朋弘・鹿児島大学講師。
ICTで様々な”外化”が可能に |
益川氏は「思考力は、直接教えることができないもの。他者との関わりの中で思考力を使って学ぶことで、深く学ぶことができる、という経験を各学年で積み重ねていくこと。限られた時間で思考力を育むためには、知りたい、わかりたいと感じる課題を用意すること、情報など考える材料を与えること、互いの考えを様々な形で表現するなど〝外化〟して見直しのチャンスを多く与えることがポイント。ICTは外化を円滑にし、相互のやりとりを増やすことができる。簡単に理解するための道具として導入するわけではない」と語った。
平井氏は「プログラミング教育を通じて1年間で、発表も考えることも好きな児童が育った。場面緘黙児や不登校児童にも大きな力を与えることができ、原稿丸暗記ではなく、プロットを考えてアウトプットできる力が育った」と報告。三宅氏は「集めた情報を分類・関連付けることが重要。思考のプロセスの可視化に紙と鉛筆は欠かせない」と、シンキングツールの活用事例を示した。山本氏は「個人思考の時間確保、学習規律の定着、読む・聞く・書く・話す力の鍛錬、体験と関連させた実感、創造・生産的な活動とすることが思考力向上とICT活用のポイントである。思考の結果だけではなく過程を外化することが教員に求められる」とした。コーディネータの赤堀侃司教授(JAPET&CEC会長)は「重要である、やってみたいと思ったときに身体と頭が動く。その気持ちを高めるものがICTである」と述べた。