ヒートマップ機能の教員用画面(イメージ)。何人の学生が、どのページを閲覧しているかが、リアルタイムでヒートマップ表示(色による視覚化)される |
九州大学は、学習活動と教育活動を効率的かつ効果的に進めるための学習支援システム「M2B(みつば)」を開発し、平成26年度後期から試行的に利用を開始、27年度後期から全学展開している。
本連載28年6月号では、同学が「ラーニングアナリティクスセンター」を設置し、教育に関するビッグデータを収集・分析し、教育や学習のさらなる向上のサポートに注力していることを紹介した。
今回は、ラーニングアナリティクスセンターが普及を進めているM2Bの概要や導入効果、稼働状況などについて紹介する。
九州大学では平成26年度から、学生が生涯にわたって自律的に学び、未知の問題や状況に果敢に挑戦する行動力を備えた人材「アクティブ・ラーナー」の育成を教育目標に掲げ、基幹教育を行っている。
九州大学大学院システム情報科学研究院の島田敬士准教授は「自律的に学ぶ姿勢を身に付ける過程においては、『何を学習したか』ではなく『どのように学習したか』が重要です。そこで、学習活動のプロセスを記録し、そのデータを分析することで、学習活動や教育活動を科学的に分析し、その効果を評価したり、教育・学習の改善に資することが求められています」と、M2Bを開発・導入した経緯を話す。
M2Bは①デジタル教材配信システム②eラーニングシステム③eポートフォリオシステムで構成されている。
各システムの概要は次のとおりだ。
①デジタル教材配信システム「BookRoll」
教員が登録した電子教材を学生に配信するシステム。学生はブラウザ経由で教材にアクセスするので、特別なソフトをインストールする必要がない。
ページをめくったり、ハイライトやメモ機能を利用したりしたときは、そのログが直ちにサーバに送信され、リアルタイムに学習者の状況が分析できる。
②eラーニングシステム「Moodle」
コース(授業)管理を行うシステム。コース内での教材へのリンク、出欠管理、小テスト、レポート管理などができる。
授業効果を分析するためのプラグインも開発中で、その1つがヒートマップ機能である。
これは、授業中に受講生が電子教材を閲覧しているログをリアルタイムに収集し、その情報を瞬時に集計・可視化するシステムだ。
何人の学生が、どのページを閲覧しているかがヒートマップ(色による視覚化)として教員PCの画面に表示される。
授業を実施している教員は、学生が自分の説明しているページを開いて聞いているかどうかを、その場で確認できる。
「ヒートマップを確認しながら授業を進めることで、授業進行のスピードを、学生の状況に応じて、現場で調整できるようになりました。また、スピード調整しながら行った方が、多くの学生が教科書内にハイライトやメモを残していることが分かりました」(島田准教授)
③eポートフォリオシステム「Mahara」
学生や教員が、主に活動日誌を書くために利用。コースごとのふり返りをしたり、コースを横断的に捉えて、自分の学びをふり返ったりする際に役立っている。
現在、M2Bの利用者数(学内)は1万7千172人。1451コースで活用されている(平成29年10月現在)。今後、さらに増やしていく計画だ。
M2Bシステムの学外展開も視野に入れており、大学だけでなく、小中高への展開も検討中だ。(蓬田修一)