授業動画をクラウド上で活用している |
公開講座も多数開設している |
静岡大学は、日本マイクロソフトとデジタルトランスフォーメーション推進協力を今年3月に締結し、教育のIT化を加速させている。
デジタルトランスフォーメーションとは「デジタルへの変革」という意味だ。
同学は、授業動画制作の技術、クラウド技術、情報セキュリティ水準がいずれも高い水準にあり、平成15年にISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)国際認証を取得して以来13年連続で更新中だ。
一方、日本マイクロソフトは、企業や教育機関などに向けて、動画制作ツールOffice Mixや業務・教育・研究支援ツールOffice365を無償で提供。また、クラウドサービスAzureを低価格で提供している。
同学情報基盤センター長の井上春樹教授は「双方のこうした強みを統合し、相互補完することで、教育・研究のデジタルトランスフォーメーションの実現を図ることとしました」と語る。
同学は平成24年から反転授業支援システムの研究を始め、27年に「大学教育テレビジョン」を開発。これをさらに発展させた「クラウド反転授業支援システム」を28年に誕生させ、校内外420名の教職員が実証を行っていた。
今回の協力関係の締結によって、「クラウド反転授業支援システム」にAzureを活用し、平成29年4月から、全学での本格的な運用を開始している。
「これにより大学全体で、低コストで反転授業が実現できました。これは世界に例をみない画期的なもので、教育の革新と言えます」と語る。
コストはどれくらい削減されたのか。井上教授の試算をもとに、概要を紹介する。
静岡大学では年に約4000以上の科目(コース)が開講されている。この約半分の2000コースに「クラウド反転授業支援システム」を活用した場合を試する。1コースの授業動画数は10本必要で1年間に必要な授業動画数は2万本。従来の動画制作を基準に考えると、制作コストは1本あたり5万円で、年間10億円が必要だ。
しかし「クラウド反転授業支援システム」を活用することで、動画制作コストはほぼ不要となり、2万本の動画制作も、ほぼ不要になった。
「本サービスでは、日本マイクロソフト社が提供するパワーポイントのアドオンソフト、Office MIXを活用しています。これによって、講義終了と同時に高水準の授業動画が完成し、クラウドサイト上にアップロードされ、世界中に配信可能になります」
「クラウド反転授業支援システム」はAzureの全面活用により、登録動画数、教材数、教材容量の制限がなくなり、仮に100万本の動画を登録しても保管容量不足や処理性低下の心配がなくなったという。
現在「クラウド反転授業支援システム」は、同学のほか、他大学や教育機関において、利用が拡大中だ。
全体の登録教職員数は1770人、登録科目数は422、授業数は937、動画数は823となっている。
「今後さらに進め、目標ではありませんが、平成38年までに、静岡大学における50%の科目の反転授業化を期待しています」
「クラウド反転授業支援システム」は、授業支援だけでなく、情報発信手段としても積極的に活用していく予定だ。(蓬田修一)