「名古屋大学情報学シンポジウム」が昨年7月に名古屋大学で開催された |
ビッグデータ、人工知能、IoTなどの情報技術は社会を劇的に変えつつあり、「第4次産業革命」と言われることもある。
名古屋大学では、こうした社会の環境変化から生まれる新たなニーズに対応していくため、今年4月、これまでの情報文化学部を発展改組し、情報学部を設置する。
情報学部長(就任予定)の村瀬洋氏は「多様で膨大な情報をもとに構築された情報システムや社会制度は、多数の要素が複雑にからみあっていますので、新たな問題を引き起こすこともあります。しかし、それを単独の分野だけで解決するのは困難です。これまで学問は『自然』『人間』『社会』『人工物』を構成要素として発展してきましたが、新たに『情報』という分野が必要となってきました」と、情報学部を設置した背景について語る。
学生定員は145人。これまでの情報文化学部から60人増やした。学科は「自然情報学科」「人間・社会情報学科」「コンピュータ科学科」の3つ。
自然情報学科は、自然現象や社会現象のデータ分析と数理モデル化、シミュレーションによる理解を探究する。
人間・社会情報学科は、人間の心理や知覚・感覚、コミュニティやマーケットを情報学を駆使して解明できるようにする。
コンピュータ科学科は、コンピュータ、ネットワーク、人工知能、音声・画像処理などの情報科学技術を専門的に学ぶ。
いずれの学科も、文系・理系の境界を越えた立場から、情報学を幅広く学べるようになっているのが特徴だ。
従来のセメスター制(前後期制)から、1年を4つの学期で構成するクォーター制を採用することで、学生が海外留学やインターンシップに参加しやすくする。
村瀬氏は「情報学の観点から、幅広い分野を俯瞰することで、自らが心底取り組んでみたい分野を見出し、専門知識を身に付け、人類が直面する課題の解決にチャレンジしてほしい」と情報学部に入学する学生に期待を寄せる。
専任教員は93人で、そのうち9人に年俸制を導入。産業界や社会からの意見を取り入れるため、学外有識者にアドバイザーへの就任を依頼する。
本紙1月号の本連載では、滋賀大学で4月からデータサイエンス学部が新設されることを紹介した。同学部では、ビッグデータなどを専門的に扱えるデータサイエンティストを育成していく。
4月には名古屋大学や滋賀大学以外にも、情報やデータサイエンスを扱う学部を設置する大学が増える。
東洋大学は、東京・赤羽台の新キャンパスに「情報連携学部」を設置。学部長には、TRONプロジェクト(ユビキタスコンピューティング環境を目指すプロジェクト)で著名なコンピュータ科学者・坂村健氏が就任予定だ。
情報関連を重視する傾向は女子大でも同様で、津田塾大学は、新設する「総合政策学部」で、データサイエンスを基礎科目として学生に身に付けさせていく。
ビッグデータの爆発的な増加とともに、情報を専門的に扱いながら、課題を見つけ解決していく人材は、ビジネス、医療、教育など様々な分野で今後、ますます求められている。情報関連の学部で、こうした社会のニーズに応えていく人材が育成されていくことに期待したい。
(蓬田修一)