2月25日に第2回私立公立高等学校IT活用セミナーを、大阪・CIVI研修センター新大阪東で開催した。大阪での高等学校ICT活用セミナーの開催は初であったが、当日は72名の参加者があった。次回私立公立高等学校IT活用セミナーは7月28日に東京・KFCホールで開催する。
県立岡山芳泉高等学校 小野政博指導教諭 |
岡山県立岡山芳泉高等学校は、平成26年度から2年間、国立教育政策研究所教育課程研究センターの指定事業で、数学科が「思考力・判断力・表現力を育成する指導方法の研究」~書くこと、説明することを重視した言語活動を通して~を研究・実践した。それを契機に、全教科で言語活動の強化を目標に掲げ、主体的、協働的な学習の研究に取り組み始めた。27・28年度は、生徒の主体的な学びがさらに広がり、思考が深まるよう、アクティブ・ラーニング(以下、A・L)の導入とICT機器の活用により授業改善を進めてきた。
ICT環境は、26年度から2年かけて全普通教室(30教室)に短焦点プロジェクターとAppleTVを設置。各教科に情報端末(iPad)を1台、図書館に20台を整備した。
28年度は、図書館を利用した授業を年間195時間実施。主に情報収集(調べ学習)やプレゼンテーションに活用した。
国語科では、「羅生門」「蠅」「城の崎にて」「山月記」「こころ」などの文学作品の読解をグループごとに分担し、その作品の魅力について情報端末を用いてプレゼンテーション。平家物語「忠度の都落ち」では、生徒が制作したスライドを映しながら英語でプレゼンテーションした。
地歴公民科の現代社会では、『昔話法廷』(NHK)から動画「三匹のこぶた」裁判を視聴し、こぶたの行為が正当防衛の無罪か有罪かについて考えた。まず自分の意見をまとめ、次に根拠や理由を示しながらグループ討論。その中で、生徒の考えが深まったり変容することに授業のねらいがある。
理科では、生物の教員が反転学習に取り組んでいる。教員が顕微鏡で撮影・編集したデジタルコンテンツ(動画)を本校HPの「動画集」にアップし、生徒はその動画を視聴して次の授業に臨んでいる。「動画集」には授業用コンテンツを多数アップしており、生徒が予習・復習でいつでも視聴できるようにしている。
保健体育科では、情報端末の携帯性やカメラ機能を生かした使い方をしている。マット運動やハードル走の正しいフォームの確認や修正を始めとして、活用事例も多い。
課外活動でもICT機器を活用している。本校に隣接している幼稚園の園児が描いた紙芝居を、美術部と放送文化部が協力して3D紙芝居として制作。これをDVD化して卒園式にプレゼントするなど、地域貢献の一助となっている。
A・LやICT機器活用による授業改善を進めて2年。
アンケートによると、「A・Lや言語活動を取り入れ、思考が深まる授業を心がけている」「ICT機器を効果的に活用できている」教員が増えるなど、授業改善の意識が高まっている。
生徒も「授業に意欲的に取り組んでいる」「授業を受けて、教科・科目に対する意欲・関心が高まった」と、学びに向かう力が伸長している。
A・LやICT機器活用によりアウトプットする機会が増え、「深く考える力、主体的に学ぼうとする力、コミュニケーション力、自ら発信する力」などの力が生徒に身に付いたと、多くの教員が実感している。
これらはまさに、急速に進展しているグローバル社会で活躍するために必要な力であるといえる。
A・LやICT機器活用によって学びの質が変わり、生徒の主体的な学びを感じているところである。
【講師】岡山県立岡山芳泉高等学校・小野政博指導教諭
【第2回私立公立高等学校IT活用セミナー・大阪:2017年2月25日】