日本国内やその土地ならではの食材を利用する「和食」は、古くからある究極の“地産地消”。フードマイレージや自然との共生等の観点から、SDGsの目標達成に向けても和食が注目される。
本連載2回目は島特有の環境の中、子供たちの地場産物への関心を高める取組を紹介する。
東京都の島しょ部、伊豆諸島にある新島村は、新島・式根島の2つの島からなる。各島に
村立の保育園・小学校・中学校が1校(園)ずつある。
「だしで味わう和食の日」※には2017年から参加。村内すべての給食施設で一斉に実施する。
「朝食にパンが好まれる傾向があるなど洋食化が進む中で、なんとなく和食を食べるのではなく、“伝統的な和食の良さ”を改めて伝えている」と、新島村さわやか健康センター・遠藤律子主任管理栄養士は話す。
※「だしで味わう和食の日」https://washokujapan.jp/dashi-document/
昨年11月24日「和食の日」の式根島学園式根島小学校・式根島中学校(式根島学校給食共同調理場)の献立は「真鯛のみそマヨネーズ焼き、明日葉の味噌汁、磯辺和え、なめたけ、米飯、牛乳」。真鯛、明日葉など地場産物を使い、和食の基本である一汁一菜を意識した。新島小学校・中学校(新島学校給食共同調理場)も「真鯛の塩焼き」を提供した。
子供たちからは切り身の真鯛が使われたことに驚きの声が上がった。
「地元に養殖場があり、高価な魚であることを子供たちが知っているからです」。
真鯛は式根島にある村営養殖場から提供された「式根鯛平君」で、地産地消給食も兼ねた。当日は養殖場の映像を学校や教室に配信。子供たちは地元の魚を食べていることをより実感した様子だったという。
村で採れた新鮮な食材は、美味しく栄養価が高いだけでなく、島と外部をつなぐ船が欠航した際にも仕入れの心配がない。物流コストも低くフードマイレージへの取組にも有効だ。
しかし地産地消給食の実施は簡単ではない。村内の収穫量が少なかったり、高級魚として内地に出荷されたり、材料費として地場産物を使わない方が安く済むからだ。
それでも年間を通して積極的に採り入れる。
「村の高校は一校のみで子供たちは15、18歳で島を出る。それまでにできるだけ多く地元の食材を食べて欲しいと、村に配置される栄養士が代々取り組んできた」と遠藤主任管理栄養士。その熱意が周囲の人々の共感を呼び、現在、村の各方面からさまざまな協力を得られているという。
その一つ、農作物は、明日葉、アメリカ芋(色の白いさつま芋)、玉ねぎ、里芋などの地場産物があり、村の農業協同組合が生産者個人ごとの収穫予定一覧表を作成。
栄養士が献立を作成する際に参考にするためだ。
新島村の夕食の共食率は90%以上。給食が家庭で話題になることも多いという。給食から家庭へ、和食・地産地消を発信している。
Photo:
「和食の日」の実践。保育園では、だしをひいたあとの「だしがら」を炒ってふりかけに。だしがらにもうま味や栄養があることを体感
真鯛の養殖場のようすを紹介(写真は新島小学校)
昨年は、地場産物の活用を目指し“村の魚”である「タカベ」の給食提供にもつなげた。地元の各機関が協力したほか、東京都産業労働局の区市町村食育推進活動支援事業費補助金も活用した。
学校栄養士、食育担当教諭の協力により、事前に生産背景や箸の持ち方、焼き魚の食べ方を子供たちに伝えた上で、給食ではタカベの塩焼きを提供した。魚は「食べにくいけど、食べたら美味しい」ことへの理解を深め、さらに地産地消の理解にとどまらず、残食やフードマイレージ(SDGs)について考える機会を設けた。
11月24日は「和食の日」。学校給食で子供たちが和食に触れる機会にしませんか。
(一社)和食文化国民会議では、全国の保育園・幼稚園・小学校・中学校の学校給食や授業で活用できるよう、和食について学べて家庭にも伝えられるリーフレットや、給食だより等で利用できるダウンロード素材、「和食の日」の実践事例の資料などを用意しています。
詳細URL=https://washokujapan.jp/dashi-document/
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年7月17日号掲載
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