2013年12月に「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ「世界無形文化遺産」に登録され、今年10周年を迎える。一方で家庭における和食の継承は難しくなってきており、学校や保育施設における給食が、和食文化の継承に大きな役割を担うようになってきた。
そこで本連載では学校給食における和食を取り上げる。
第1回は和食献立の中で「だし」のうま味や食材を活かすことで減塩も取り組む都内の中学校を紹介する。
江戸川区立小岩第四中学校(鈴木訓文校長)は今年創立70周年を迎える、生徒数369人の中規模校。日々提供される学校給食は好評で、毎日完食する学級も珍しくない。
「給食は生徒が選べないもの。だからこそ残さずしっかり食べ成長を支えられる、美味しい献立を考えたい」と語るのは、船木由圭里主任栄養士。
洋食、中華など変化に富んだ献立の中でも、和食は積極的に週3回程度は取り入れるようにしている。「家庭では調理しやすい洋食が多いと思われるので、給食はできるだけ和食にしたい。和食は日本の食の基本なので」とその理由を語る。
和食文化国民会議が主催する「だしで味わう和食の日」(以下、和食の日)は、江戸川区から区内小中学校への働きかけもあり、同校も参加。船木主任栄養士は「『和食の日』があることで、意識してだしを使った取組を推進する日になる」と話す。
昨年の「和食の日」の献立は「さんまの蒲揚げ丼、きゅうりとかぶの塩昆布和え、白菜のすまし汁、みかん、牛乳」。白菜のすまし汁では、通常より1・5倍程多めにだしを使用し、ゆずで風味豊かにし、塩分の調味パーセントが0・6%でも美味しく感じられるしっかりした味わいになったことで、減塩にもつながった。
減塩は江戸川区全体の取組でもある。2022年施行「江戸川区食育推進計画(第2次)」では減塩の数値目標(2026年迄に男女共2㌘減)を設定し、学校給食でも常に意識することの一つ。そうした中「和食は食材の使い方や調理の工夫次第で、塩分の調節がしやすい」(船木主任栄養士)。
「うま味」は食材からも
だしをたくさん使えば減塩につながるものの、毎回の給食では費用面で厳しいところ。そこで野菜の甘味や鶏肉といった様々な食材からの“だし”や“うま味”も活かすようにしている。吸い物であればだしに加えてかまぼこやわかめを使用する。うまみがしっかり出ていると、生徒たちも良く食べてくれるという。
他にも、ゆず、ゴマ、梅、鰹の糸削りなど、和の食材には風味や食感が良くなるものが豊富なため、塩分を控えつつも味わい深い献立が可能になる。
さらに“煮魚の煮汁を最小限に抑える”といった調理員の技術にも支えられている。
取材時は開校記念日のお祝い給食で「鯛めし、梅肉和え、かまぼことかぶのすまし汁」など。鯛めしは、鯛のあらをオーブンで焼いてから昆布と一緒にご飯を炊き、別に焼いた鯛を混ぜ込んだ。炊く際にご飯にうま味がしっかりついたので、予定より混ぜ込む鯛の塩分を控えめにできた。各学級、ほぼ完食だったという。
Photo:江戸川区立小岩第四中学校の「給食感謝ボード」
生徒の発案により、給食室前に設置された「給食感謝ボード」。日々の給食の感想やお礼の言葉、時にはメニューのリクエストなど、生徒たちが思い思いの言葉を寄せる
11月24日は「和食の日」。学校給食で子供たちが和食に触れる機会にしませんか。
(一社)和食文化国民会議では、全国の保育園・幼稚園・小学校・中学校の学校給食や授業で活用できるよう、和食について学べて家庭にも伝えられるリーフレットや、給食だより等で利用できるダウンロード素材、「和食の日」の実践事例の資料などを用意しています。
詳細URL=https://washokujapan.jp/dashi-document/