間もなく新年度が始まります。新入生を迎える準備をし、栄養士養成校での調理実習をどのように学んでもらうかの挑戦が始まります。
これまでの1年間を振り返ると、驚きと戸惑い、そして発見の繰り返しでした。コロナ禍以降の学生対応の中で、中学・高校と直接影響を受けてきた学生さんたちへの接し方に苦慮しました。教える側の常識は、もはや非常識に近く、合理的配慮という社会的な考え方を理解し、配慮していかねばならず難しいことも多々ありました。
工程説明
ガトーショコラ
2月の初旬に学園祭があり、それぞれのクラスがテーマを決めて、相談し発表する場がありました。昨年指導した学生と本年度の学生の教室を見て回り、1年間、週に1度顔を合わせ、30回の授業を通し、栄養士の資質を育む手助けができたのかと不安でしたが、それぞれの能力に見合う成長を感じられました。
特に昨年の学生たちは自由研究も行い、「3秒ルールってほんと?」というテーマで、落とした食品を3秒以内に拾った場合の細菌検査をして実証できるかを発表していました。条件により菌の数は変化しますが、食中毒等を起こすほどの菌数ではなく、大丈夫らしいと結論付けていました。着眼点の素は調理実習初回の授業で、指先とピアス等の穴の周りを綿棒で拭き、寒天培地に移植し、大腸菌群他の菌検査を行い自己衛生管理の重要性を学んだことで思いついたそうです。
ターメリックライス
洋風献立
1年生のクラスでも、世界の食事事情や行事食、ジブリの世界のフードパーク、アンパンマンをキャラクターに膨化を利用したお菓子など、学んだことを生かし上手に紹介していました。学んでくれた事は、色々な形で表現され、各個人の見えない力になっているように思います。今後が楽しみなります。
これからの指導に当たり、チャレンジすべきことも徐々に見えてきました。食材に手を加え、食することを可能にし、栄養的にも満たされ、更に美味しさを追求できるところまで歩み続ける能力を育むため、一つひとつ丁寧に接することが一番です。決まった時間内に試食できるように、調理過程を改めて見直しています。
中華風献立
和風献立
現代の風潮である、時短、手軽、コストパフォーマンス。これも調理をしていく上で大切なことです。しかし、次の世代を担う栄養士に求められる、あるいはあるべき姿はセオリーを大切にし、応用力を磨いてもらうため、より細かく、より丁寧に指導することが求められているようです。次年度も楽しみながら授業を進めたいものです。
【著者】澤坂明美=管理栄養士。女子栄養大学香友会と業務提携し『プロカメラマンとフードコーディネーターに教わる料理写真講座』を継続開催、女子栄養大学認定料理教室等を主宰する。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2025年3月17日号掲載