近年では自然災害、児童生徒が巻き込まれる事件や事故などが頻発している。学校だけで防止しきれない状況があることを背景に、文部科学省の学校安全有識者会議が3月3日、「コミュニティ・スクール」(CS)等の活用で地域と連携した体制づくり、「学校安全の中核を担う教職員」の配置などを柱とした「審議のまとめ」を提出。国、教育委員会・学校設置者、各学校それぞれに対応を提言している。
文科省が設置した学校安全の推進に関する有識者会議(座長=渡邉正樹・東京学芸大学名誉教授)は先ごろ、「学校安全の推進に関する組織体制の整備と地域等との連携について~複雑化・多様化する課題に対応するための、実効的・持続的で安全・安心な学校づくりに向けて~」(審議のまとめ)を提出。「学校安全を推進するための地域や関係機関等との連携体制の整備」、「学校安全の中核を担う教職員及び校内組織体制の整備・充実」、「教職員の学校安全に関する資質能力の向上とそれを支える環境整備」の3方向から、今後の施策に関して提言している。
地域や関係機関との連携では、CS(学校運営協議会を設置する学校)や地域学校協働活動の仕組みを最大限に活用することを提言。地域の共通課題でもあることから、自治体の警察・消防組織とも連携を強化・推進する。またセーフティプロモーションスクール(学校安全について組織的・計画的に地域と連携し、実践・改善を継続していることを認証された学校)の考え方を取り入れた学校安全も提案。
「学校安全の中核を担う教職員」(中核教職員)の校内組織の整備等について、まず学校の経営方針は学校安全を柱に位置付ける。その上で中核教職員は「新たな職」として中堅層の教員をあて、適切な処遇等を検討するよう求めている。中核教職員の役割は具体的に「校内組織の円滑な機能、取組の効率を上げるための指導・助言」、「実効性のある学校安全計画・危機管理マニュアルの策定」、「校内研修の企画・実施、外部機関との連絡・調整窓口」等が例示される。
さらに校内組織の整備として全教職員が関わりを持ち、校長等の管理職は学校経営への学校安全の位置づけや事故の未然防止、発生時のリーダーシップ等が期待される。
教職員の学校安全に関する資質能力の向上については、各教職員が学校安全への対応能力を速やかに身につける必要があり、負担軽減のためオンライン・オンデマンド形式や実習・ワークショップ形式を適宜に組合せた研修を充実させることを提言。国は教員養成課程での学校安全の習得や教職員の研修歴の記録。各学校では校長・管理職のリーダーシップで中核教職員を中心とした計画的な研修を実施することが求められている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2025年3月17日号掲載